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名護市長選に向け、菅・二階両氏が沖縄入り 繰り返される自民の“土建選挙”
2018年1月22日6:21PM
名護市長選(2月4日投開票)で自民党が“詐欺師紛い”の争点隠し選挙と露骨な土建選挙に再び乗り出した。昨年12月29日に菅義偉官房長官、今月4日には二階俊博幹事長が沖縄入りして自公推薦候補の渡具知武豊元市議や支援者らと面談。公共事業推進(予算増加)を強調しながら、最大の争点である辺野古新基地建設については「米海兵隊の県外・国外移転を求める」と基地反対派と同じ政策を掲げる一方、移設工事は粛々と進める二枚舌的な対応をしているためだ。
沖縄北部の名護市にまで足を運んだ菅氏が訴えた市長選向けの目玉事業が、総事業費が約1000億円の「名護東道路」(8・4キロメートル)。工事現場を視察し、未完成区間(2・6キロメートル)の1年半の完成前倒しとさらなる延伸調査を関係省庁に指示したことを明らかにした。
露骨で卑劣な土建選挙とはこのことだ。慢性的渋滞に悩まされる市民の弱みに付け込み、「道路整備を早くしてほしければ、自公推薦候補に投票をしろ!」と迫っているようにみえる。
【土地改良とバーター?】
公共事業推進と投票依頼が交換条件の土建選挙(利益誘導選挙)が得意なのは、4日に沖縄入りした二階氏も同じだ。
「全国土地改良事業団体連合会」会長の二階氏は、民主党政権時代に半分以下になった「土地改良事業(農地の規模拡大や灌漑整備などを行なう農業土木事業)」の予算増額に尽力。このことを土地改良事業関係者に対してアピールして票集めにつなげるのが二階氏の“得意技”だが(一昨年の新潟県知事選で実践した様子は本誌でも紹介)、これを沖縄でも繰り返したのだ。
那覇市内で選対会議と地元経済人との懇談をした後、4年前の自主投票から推薦に転じた公明党県本部に挨拶をした二階氏は、続いて名護市内のホテルで渡具知候補や末松文信県議らとの意見交換。その後、二階氏はこんな提案をした。
「私は土地改良事業連合会に行ってきますから、土地改良の方に声をかけて下さい。選挙で仲間が沢山いれば、何倍も力が出てきますから皆さん、よろしく」
これに対して参加者は「はい、頑張りましょう」と応え、二階氏の提案は快諾された。税金を土地改良事業を介して選挙対策に流用するかのような手法が新潟県知事選だけでなく、名護市長選でも実行に移されることになったのだ。
そこで会合を終えた二階氏を直撃、「土地改良費は選挙対策費ですか。土地改良事業と選挙がバーターではないか。利益誘導選挙ではないか」と聞いたが、「そんなことはない」と否定した。名護市内の土地改良事業の関係者は、約1200人にも及ぶという。約2500票とされる公明党の基礎票の約半分に当たるが、こうした利害関係者に投票依頼をするのが二階氏の“得意技”なのだ。
また菅官房長官が表明した「名護東道路」の完成前倒しも、利害関係者に自公推薦候補への投票を促す効果が期待できる。市内大手の建設会社「東開発」や「屋部土建」がすでに名護東道路の工事を受注しており、前倒しや延伸実現となれば、今後の受注増が確実に見込めるのは言うまでもない。
告示日には人気抜群の小泉進次郎筆頭副幹事長が名護市に入るとの情報も流れるが、迎え撃つ立場の稲嶺進市長は、自公推薦の渡具知候補について「辺野古新基地問題には触れずに海兵隊の県外・国外移設を求める一方、再編交付金(基地受入と引き換えに国が交付)を受け取るのは、矛盾に満ちた無責任発言だ」と指摘。争点隠し選挙に対抗しようとしている。
そんな中で沖縄では、6日にはうるま市の伊計島、8日にも読谷村に米軍ヘリの不時着が相次いだ。国会での日米地位協定見直し論議や名護市長選にも影響を与えるのは確実だ。“国民の税金を選挙対策に流用するに等しいアベ土建政治”が通用するか否か、の試金石でもある名護市長選が、注目される。
(横田一・ジャーナリスト、2018年1月12日号)