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【憲法を求める人々】萩谷麻衣子(佐高信)

2018年1月23日6:41PM

 むのたけじは『詞集たいまつ』(三省堂新書)でこう喝破した。

「戦場で死んだ兵士は最後に『かあさん!』とよんだ。しかし母親のだれも、むすこのそのこえを聞いていない」

萩谷はむののこの言葉に全身で共感するだろう。『俳句界』12月号の「佐高信の甘口でコンニチハ!」で、私に次のように語ったからである。

「テレビで『憲法改正反対』とか言うと、すぐに反日左翼だとネットでは言われるんですけど、あまり左右というのは意識したことがなくて、ただ子どもの母親として戦争反対なんです。特に、ちょうど十八歳の息子もいますから」

安倍晋三を筆頭として勇ましげな議論をしている人たちは決して自分は戦争に行かない。安全な立場で声高に主張しているが、
「では、誰が行くの?」
と問いたい、と萩谷は言う。

改憲して軍隊を持つことにしたら、自衛隊だけでは絶対に足りなくなって徴兵制にせざるをえなくなるだろう。

「そのときにうちの子どもやその友達を戦争に行かせられるのかといったら、私は絶対反対。それを言うと感情的だとか、お国のことを思っていないのかと言われるけど、それなら、あなたが行きなさいよと思うんです。あの世代の子たちを戦争に行かせて人を殺させて、殺されるかもしれないんだったら、攻撃されて死んだ方がいいじゃないかと、母親としての思いが強いです」

穏やかな口調ながらキッパリと、萩谷はこう言い切る。

そして、国民の多くが徴兵制を望むなら、「中高年男女問わず」そうしたらいい、と続ける。

むしろ、若い人は最後にして、中高年から前線に行くべきではないか。

「そこまでの覚悟をして憲法改正に一票入れるのかと、テレビでも言う機会があったら言いたいと思っているんですけどね」

やわらかな感じで語る彼女がテレビからはずされないことを祈るばかりである。

『朝まで生テレビ』で同席して、あの喧騒の中できちんと話す彼女に感心した。絶叫調でなく、しかし、言うべきことを言うのは、かなり難しい。それを可能にしているのは彼女の芯の強さだろう。

詳しいことは聞かなかったが、同業の彼と結婚する時に母親に反対され、板挟みになって、電車に飛び込もうかと思うくらい辛かった時期が数年あったという。

「でも、そのときの双方から責められて苦しかった状態が、今の仕事に生かされていると思います。そういう方が離婚の相談に来られると、何が苦しいのかわかるんです。苦しかった経験が生かされているので、いい仕事だなと思いますね」

もう一度、むのの『詞集たいまつ』を引けば「語り上手が良い聞き手であるとは限らない。しかし聞き上手は、必ず良い語り手である」とある。

萩谷も、よく聞くことから信頼関係は生まれることを学んだ。

弁護士は依頼者の話を聞きながら、どこが問題でどう戦うかという「法律構成」を組み立てるが、依頼者はそれとは関係ないことも話す。しかし、彼あるいは彼女がこだわっているところが重要だったりするのである。

「だから、時間をかけて聞く事は大事だなって思います」

国家なんて言葉は一番信用できないと思うとも萩谷は語る。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、12月15日号。画/いわほり けん)

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