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自民総裁選のカギ握る“魔の3回生”(西谷玲)

2018年1月28日4:07PM

2018年の幕が開けた。今年の国内政治のポイントはまず、9月の自民党総裁選である。安倍晋三首相が出馬するのはまず間違いないとみられるが、ここで安倍氏が当選して、3年の任期をまっとうすれば、第2次大戦後の吉田茂氏、そして戦前の桂太郎氏を抜きさり、憲政史上最長の首相になるかもしれない。

今のところ、他に出馬の可能性があるとされているのが石破茂氏、岸田文雄氏、野田聖子氏、河野太郎氏あたりだが、いずれも今のところパンチ力に欠けており、安倍氏がもっとも有力である。

対立候補以外に総裁選を占うカギなのが、「魔の2回生」である。自民党が政権に復活した2012年での大量初当選組で、当時は116人いた。暴言や不倫騒動など発言や行動が次々に問題となり、離党や議員辞職した人もいた。14年に再選を果たしたのは参院議員経験者を除き96人で、昨年の総選挙では15人が落選し、81人となった。

彼らは自民党が苦杯をなめていた野党時代を知らない。だから苦労知らずで甘えが目立ち、政治家としての見識が足りないとも指摘される。谷垣禎一前幹事長や引き継いだ二階俊博幹事長はそんな彼らに党員獲得1000人のノルマを課し、実現できなければ外遊を禁じたりもした。

そんな彼らも少しずつ淘汰されて当選3回を重ねた。安倍一強と言われるのは、党のなかで3割近くを占める彼らが声もあげず、唯々諾々と安倍氏に従っていたからでもある。だが、これからはその光景が少し変わるかもしれない。力と自信を少しずつ増してきた彼らが、発言を始めるかもしれないのだ。すでにその兆しは見えている。

昨年の総選挙では、民進党が分裂したために自民党が大勝はしているものの、選挙区の最前線では安倍批判が渦巻いていた。彼らはそれを肌で感じている。もし今後も、これまで同様、安倍首相に何も言わない状態が続けば、自分の存在基盤が危うくなるかもしれないというのを理解したのだ。

すでに「ようやく3回生になった。これからはきちんと物を言っていきたい」というような、宣戦布告というと大げさだが、そんな思いをあちこちで自民党の3回生から聞いた。彼らが総裁選でどう動くのか。数は力である。「現代っ子」で、派閥への帰属意識も弱い彼らがどのような行動をとるのかが総裁選の動向を決めるといえよう。それからもう一つ、総裁選だけの問題ではないが、安倍官邸が今、今年の目玉としてねらっていることを指摘しておきたい。

それは安倍首相の訪中だ。

北朝鮮問題も緊張し、トランプ政権の方向性も不透明である今、日中がどういう関係をつくっていけるかは大きな課題である。その大きな一歩として安倍官邸は今、訪中して習近平国家主席と会談をする、しかもその時期を総裁選にぶつけた9月にねらっているというのだ。他の候補たちに対し、「自分は君たちとは全然違う地平を見ているのだ」ということを見せびらかしたいというわけだ。

もちろん日中の首脳外交は非常に重要である。昨年末に外務省の次期事務次官に秋葉剛男氏が内定した。非常に交渉上手で菅義偉官房長官の覚えもめでたい。着々と準備は進んでいる。

(にしたに れい・ジャーナリスト、2018年1月12日号)

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