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見送るということ(小室等)

2018年1月29日8:30AM

去年二〇一七年、僕の“職場”で亡くなった人。

まずは三月一日、かまやつひろしさん。六〇年代後期、アートシアター新宿文化の支配人・葛井欣士郎さんがアートシアターの地下にアンダーグラウンド「蝎座」を作り、そこで三日間フォークのイベントをやってくれと依頼され、吉田拓郎さんや六文銭などが出たなかで、グループサウンズに越境して恐る恐るかまやつさんに声をかけたらすんなりOKで拍子抜けした。

かまやつさんにとってあれがフォークとの付き合いの端緒で、後に「実はフォークの人たちって少し怖かったのよね」ともらしていたが、ゆくゆく吉田拓郎作品「我が良き友よ」の大ヒットが生み出されるのだから世の中何が起こるかわからない。

四月五日、加川良さん。同じ職場なんだけど、配属場所が違ったらしく一緒になる機会は少なかった。芸風も良さんと僕は違う。でもときどき、良さんのファンで小室のファンでもあるという人に出会う。世の中、不思議だ。

六月二四日、佐藤公彦さん。ケメの愛称で当時のフォークでは異色のアイドル的スター。吉田拓郎さんもアイドル的人気を博したが、ケメは中性的王子様という感じ。もちろん職場は違いましたが、ケメの弟が少しの間僕のマネージャーとして付いてくれたし、僕の家で飼っていたホワイト・テリアは佐藤家からやって来たので、佐藤家とは近い距離にあった。

一〇月二五日、遠藤賢司さん。エンケンこと遠藤賢司さんを面と向かっては「賢ちゃん」と呼んでいた。賢ちゃんからの最後は〈「想い出づくり。」、日本映画チャンネルでみてますよ。やはり、名曲ですね〉と僕の音楽をほめてくれたメールだった。訃報をキャッチしたのはボルドーでワインを飲みながら十数年ぶりの生牡蠣を食べているときだったのは、この欄でも触れた。異国のレストランで生牡蠣とワインでの追悼であった。

一二月二日、はしだのりひこさん。ザ・フォーク・クルセダーズ、加藤和彦さんとも、北山修さんとは今も親しくしているが、はしださんとは子ども同士が同窓という以外、ご縁は浅かった。

いずれにしても、この歳になると、生き残るということは人を見送るということだと、つくづく思う年の瀬であったのだが、年頭にあたってひとつ。

昨年、すべての芸人、芸能人、ミュージシャンは、ウーマンラッシュアワーに頭を叩かれた。

ヒロちゃんは、自分にとって彼らの存在は大歓迎と言っていた。

今後、彼らがどう扱われていくのか、注視していかないとね。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年1月12日号)

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