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男性こそ声を上げて!(雨宮処凛)
2018年2月3日8:00AM
「Me Too」運動を受け、世界でセクハラへの抗議が続いている。
1月7日には、ゴールデン・グローブ賞の授賞式が黒一色に染まった。女優のメリル・ストリープさんらが、セクハラへの抗議として黒い衣装での参加を呼びかけたのだ。アンジェリーナ・ジョリーさんやニコール・キッドマンさんなどそうそうたる女優たちが黒い衣装で登場し、男性陣もセクハラと闘う「Time‘s Up」(もうおしまい)キャンペーンに応じ、黒い装いで現れた。
ハリウッドの大物プロデューサーのセクハラ問題への告発をきっかけとして世界に広がる「Me Too」の声。日本でも、多くの女性が声を上げ始めている。が、そんな動きを好ましく思っていない男性もいるようだ。「自分も告発されるかも!?」と怯える人もいるだろうし、「なんでもかんでもセクハラって言われても」という声も聞く。
が、この機会に、男性にこそ、声を上げてほしいと思う。
たとえば、高橋まつりさんが自殺に追い込まれた電通では、1991年にも入社2年目の男性社員が自殺している。長時間労働に加え、彼は上司による悪質なパワハラに晒されていた。その中でももっとも陰湿だったのは、「宴席で革靴に注いだビールを飲まされる」などの嫌がらせだ。
飲まなければ、靴のかかとで叩かれるという屈辱的な仕打ちが待っていた。この手の嫌がらせは、女性社員には滅多にされないだろう。ここまで極端でなくとも、日本の多くの企業社会には、体育会系の男社会を地でいくハラスメントが横行している。
到底飲めない量の酒を飲むことを強要する。上司の酒に延々付き合わせる。一緒に風俗に行くことを強要するなどだ。どれもこれも、断れば「それでも男か」なんてマッチョな声が飛んできそうだ。
いくらパワハラという言葉が認知されようとも、上司の誘いを断ることは難しい。しかも、中にはそれらの誘いを「楽しめて」しまう人もいる。上司も「相手も喜んでいる」と思い込んでいるケースもあるからやっかいだ。しかし、そんな企業社会で生きる男性の悲鳴は、たびたび耳にしてきたものでもある。
男性が働きづらい職場で、女性が働きやすいはずがない。今、やっと多くの女性たちが「相手は大した悪気がなくやっていたけれど、自分は傷ついた」ことに対して声を上げ始めたのだ。そしてそのような告発によって、自分がしていたことが暴力やハラスメントだと気づく男性が現れ、空気は確実に変わっているのである。
だからこそ、この流れで、ひっくり返せるところまでひっくり返したい。同時に、私も含め、すべての人が今一度、自身の言動を振り返るべきなのだ。「Me Too」は決して「復讐」などではなく、すべての人が生きやすい社会への第一歩なのだと思う。
(あまみや かりん・『週刊金曜日』編集委員。2018年1月19日号)
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