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通常国会は沖縄問題が与野党激突のテーマに 日米地位協定改定の論戦へ
2018年2月5日1:43PM
翁長雄志沖縄県知事は1月19日、米軍ヘリ事故の視察で沖縄入りした与野党国会議員11名(衆院安全保障委員会メンバー)に怒りを爆発させた。「日本政府は国民を守ることにまったく当事者能力がない。事故が起き、要請にいくたびに日米両政府にたらい回しにされてきた。これが誇りある品格のある日米安保体制か」。
12月にヘリの窓枠が落下した普天間第二小学校(宜野湾市)の上空を、視察前日の18日にヘリが飛んだことにも知事は激怒、「沖縄防衛局がカメラでヘリを撮っているのに米軍は否定している。米軍はよき隣人ではない」と批判した。
この日の与野党合同視察は、4日前の野党合同視察に触発されたものだった。両方とも参加した立憲民主党の本多平直衆院議員はこう振り返る。「12月に米軍ヘリの落下物事故が起きた後、安全保障委員会の閉会中審査を求めましたが、与党は拒否。1月に入って立て続けにヘリの不時着事故がうるま市と読谷村で起きたので再度、閉会中審査を申入れたところ、これも拒否。そこで『野党はまず調査団を出す』と言って15日に視察、すると、与党はようやく『安保委の議員視察をする』と言い出した」。
野党の現地視察を与党が後追いした大きな理由が、自公が総力戦を展開中の名護市長選(2月4日投開票)への懸念であることは明らかだ。稲嶺進・名護市長も、支援する翁長知事も「米軍ヘリ全機種点検と安全確認までの運用(飛行)停止」を求めているが、安倍政権(首相)は形だけの申入れで事足り、「『米国第一・日本国民二の次』の安倍自公政権推薦の渡具知武豊候補 対 県民第一の稲嶺市長(オール沖縄支援)」という様相を呈している(1月12日号と19日号で紹介)。そこで与党議員も慌ててヘリ事故視察に駆け付けたようにみえるのだ。
安倍政権の住民軽視の姿勢は15日の野党合同視察でも露呈した。読谷村のヘリ不時着現場で渡辺周元防衛副大臣(希望の党・外交安全保障調査会長)が「(防衛省の)政務三役は現地視察に来ていますか」と聞くと、防衛省の中嶋浩一郎沖縄防衛局長は「来ていません」と回答。これを野党議員団から聞いた翁長知事は「別の所に行っていたのではないか」と皮肉った。
「別の所」は名護市とすぐに分かったが、名護東道路完成前倒しなど公共事業予算増と投票依頼が交換条件の“土建選挙”で新基地反対の稲嶺市長交代を目指す安倍政権は、県民の命よりも米海兵隊用の辺野古新基地建設の優先順位が高いと見られても仕方がない。
【9条改憲論議にも影響】
翁長知事は野党議員団に「日米地位協定が問題」とも指摘。事故原因究明のないまま飛行再開をする米軍と「NO」と言えない安倍政権の弱腰は、日本の占領国状態の継続を物語るものだが、この現実を野党は直視。
知事面談後の囲み取材で「日米地位協定の改定について国会で取り上げるのか」と聞くと、先の本多氏は「各党代表クラスもそういう発言をしていますので、各党それぞれの立場で地位協定には問題意識を持っている」と前向きの姿勢。「憲法改正の前に日米地位協定を見直すのが先決ではないか」との質問には、渡辺氏が答えた。
「(ヘリ事故の詳細など)日本側から聞かないと米軍は答えない体制を変えないといけない」「親密な日米首脳関係と首相が言うのなら『対等な関係にしましょう』と言うべき。『戦後レジームの脱却』というのなら、日米地位協定改定で仕組みを変えないとおかしい」
沖縄ヘリ事故問題を重く受け止めた野党が、形だけの申入れで飛行再開を許す安倍政権を徹底追及、日米地位協定改定の論戦にまで踏みこもうとしている。
そして与野党激突の国会論戦は、名護市長選に影響を与えるだけでなく、安倍首相主導の自衛隊付記の憲法9条改正(改悪)への疑問呈示、代替案提示となる可能性も出てきた。「戦後レジーム(米国の占領国状態)からの脱却を目指す野党対自衛隊付記で事足りる安倍自民党」の構図だ。
(横田一・ジャーナリスト、2018年1月26日号)