阪神・淡路大震災の石綿が死因 労災認定求め遺族が提訴
2018年2月9日11:27AM
阪神・淡路大震災(1995年)のがれき撤去作業などでアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫で死亡した元明石市職員の島谷和則さん(死亡時49歳)の妻Aさん(54歳)が1月15日、公務災害と認めなかった地方公務員災害補償基金兵庫県支部に対し、認定を求めて神戸地裁に提訴した。同震災の復旧作業に従事した公務員の石綿疾患による死亡をめぐり、公務災害の認定を求める提訴は初めて。
震災当時、市の環境事業所に勤務していた島谷さんは、石綿粉塵が大量に舞う現場で建築廃材やごみなどを処理していたが、震災17年後の2012年に悪性腹膜中皮腫になり翌年10月に死去した。
Aさんは「石綿の吸引は公務としての作業以外に考えられない」と同基金兵庫県支部に公務災害認定を求めたが、14年3月、「高濃度の石綿が含まれた粉塵を吸引したと認められない」などの理由で「公務外」とされた。Aさんは同支部審査会に審査請求したが「一般的な発症事例に比べて潜伏期間が短く、がれき作業との因果関係は認められない」と棄却された。
今回、訴状では「アスベストにさらされる作業の従事期間は、震災対応の時期以外も含めて1年以上あり認定基準を満たす」とする。
提訴後に会見したAさんは、「中皮腫とわかった時には余命2カ月半と言われた。夫の無念を同僚の皆さんたちと一緒に晴らしてこれからにつなげたい」と話す。
腹膜中皮腫は胸膜中皮腫より潜伏期は長いが一般的に十数年から30年超とされる。Aさんの代理人の位田浩弁護士は「潜伏期が少し短いことを持ち出しているが、救済しないための理由を探しているだけ」と同基金を批判する。
ひょうご労働安全衛生センター(神戸市)によると、石綿による中皮腫をめぐり一般的な労災保険は約95%が認定されたが、同基金の認定率は四十数%。震災から23年、命を賭して働いた公務員の存在を忘れてはならない。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2018年1月26日号)