除草剤グリホサートと健康被害、
因果関係を示唆する結果が続々
天笠啓祐|2018年2月17日6:23PM
「デトックス・プロジェクト」が尿検査した結果
「グリホサートは神経毒性のある化学構造をしている」と指摘したのが、黒田洋一郎(元東京都神経科学総合研究所研究者)。
以前、帝京大学医学部の藤井儔子が除草剤「バスタ」の主成分グルホシネートを用いて行なった動物実験で、母親への投与で子どもが噛みつきが増すなど行動への影響が起きていた。そのことを紹介した際に、グルホシネートとグリホサートは同じ有機リン化合物であり、偽神経伝達物質と類似の構造を持ち、神経毒性を持ち得ると述べた(岩波書店『科学』2004年8月号)。
さらには仏カーン大学による動物実験などで、グリホサートによる内分泌攪乱物質としての疑いがもたれている。
今回の肝臓への影響について、米国環境保護局の科学者レイモン・シドラーは、内分泌攪乱が原因として疑われると指摘している。
米国では市民によって、食品中のグリホサートの残留検査が行なわれてきた。遺伝子組み換え食品に残留するグリホサートが原因だと思われる健康障害が拡大してきたからである。
「デトックス・プロジェクト」という農薬問題への取り組みが、2015年に米国有機消費者協会とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の協力を得て、米国で初めて人の尿中のグリホサート濃度を検査して発表している。その際、サンプルの93%からグリホサートが検出された。
また市民団体の「マムズ・アクロス・アメリカ(米国の母親)」が、子どもたちへの影響が大きいとしてワクチンを購入し検査機関に出したところ、5種類からグリホサートが検出された。原因は、ワクチン成分の安定剤として用いられているゼラチンにあった。
このようにさまざまな形で、グリホサートによる人体汚染がわかってきた。このような市民の取り組みを受けて、今年1月から、グリホサートが健康に及ぼす影響に関する大規模プロジェクトが、デトックス・プロジェクトによって取り組まれることになった。
(『週刊金曜日』2017年2月17日号掲載)