旧優生保護法下で強制不妊手術――国賠訴訟で責任問う
2018年2月23日11:20AM
旧優生保護法(1948~96年)下で、知的障害を理由に強制不妊手術を受けた宮城県在住の60代の女性が、1100万円の損害賠償を求めて国を提訴。記者会見が1月30日、仙台弁護士会で開かれた。
女性は出生時の麻酔治療の影響で知的障害を負ったが、72年、15歳のときに「遺伝性」の精神薄弱と診断され強制不妊手術を受けさせられた。今回の提訴は、旧優生保護法を「自己決定権を侵害し、基本的人権を踏みにじるもの」と位置づけ、重大な人権侵害を受けたにもかかわらず、被害救済のための立法措置を取らなかった国の不作為を問う裁判となる。
2015年には、16歳のときに知的障害を理由に強制不妊手術を受けさせられた宮城県在住の70代の女性Aさんが、日弁連に人権救済措置を申し立て、それを受けて昨年2月、日弁連が国や自治体に実態調査を求める意見書を出した。だが県が保管する優生手術台帳にはAさんの手術年度の記録が抜け落ちており、手術の詳細は把握できないままだった。今回提訴した女性はAさんの報道をきっかけに、被害者ホットラインに連絡。自らの手術についても県に情報開示請求をしたところ、優生手術台帳にその記録が見つかった。
今回提訴した女性の代理人として会見に出席した義理の姉は「なぜ妹が強制不妊手術をうけなければならなかったのかが分からず、苦しい思いをしてきた。今回『優生保護法』の存在を知り、訴える勇気が出ました。この裁判をきっかけに障害者が差別されるような世の中が少しでも良くなればいい」と訴えた。
原告弁護団長の新里宏二弁護士は「多くの被害者は孤立しており声を上げられないでいる。だからこそ補償制度をつくる必要がある」と強く訴えた。弁護団は今後も被害者を対象とした電話相談(事務局TEL 022・397・7960)を継続して行なう予定だ。
(岩崎眞美子・ライター、2018年2月9日号)