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ITの巨人とB級ホラー(浜矩子)
2018年2月25日7:00AM
皆さんは、FANGとBATをご存じだろうか。いずれも頭文字用語だ。
FANGから行こう。FはフェイスブックのFだ。AはアマゾンのA。NはネットフリックスのN。そして、GはグーグルのGである。このように因数分解すれば、お解りの通りだ。いずれも、IT業界の巨人たちである。
フェイスブックはSNSの超大手。アマゾンはネット通販の王者。ネットフリックスは動画配信で存在感激伸中。そして、グーグルは検索エンジン界の事実上の独裁者だ。グローバル時代の経済社会を思うままに操る巨人たち。しかも、その姿はネット空間に溶け込んでいて、なかなかに不可知的である。
BATに進もう。BはバイドゥのB。AはアリババのA。TはテンセントのTである。BAT三人衆はいずれも中国企業だ。バイドゥは中国最大手の検索エンジンを運営している。中国版グーグルだ。アリババは、企業間電子商取引を皮切りに、検索エンジンや電子決済サービスなどに手を広げて来た。テンセントは、SNSが得意分野である。FANG四人組も、BATトリオの大躍進には、さぞや、肝を冷やしていることだろう。
ところで、賢明なる皆さんはもうお気づきのことだと思う。FANGも、BATも、単なるにわかづくりの頭文字用語ではない。いずれも、立派に意味のある言葉だ。FANGは牙。BATは蝙蝠である。
頭文字用語の方を考案した人々が、どこまで、これらのオリジナル英語に引っかけた言葉遊びを意識したのか。それは解らないが、大いに意識したと思いたいところだ。それくらいの遊び心がなければ、頭文字用語を創作することに意味はない。
確かに、あのFANGのネット4巨人どもには、牙を剥いて迫って来る怖さがある。しかも彼らのビジネスには形がない。これがモノづくりなら、「今度の我々の新作を見てくれ」と胸を張って来る。何を売ろうとしているかが解る。そこに、一定のかわいらしさがある。謙虚さもある。だが、ネットワークを支配するものには、それが無い。どんな牙を剥こうとしているのか。それも、よく解らない。
グーグルの創設者たちは、“Don’t be evil”(邪悪であるな)を社是としているらしい。世のため人のため。そこに徹するという姿勢で行く。そう主張しているらしい。結構なことではある。だが、そもそも、こういうことをこれ見よがしに主張する姿勢自体に、一定の傲慢さと僭越さが感じられる。偉そうにするな。そう言いたくなる面がある。既にして、世の中を牛耳っているつもりじゃないか。そのように思えてしまう。
BATの蝙蝠組には、実に大いなる得体の知れなさがつきまとう。闇深き中に、群れをなしてぶら下がっている。その蝙蝠群団が一斉に飛び立つ時、彼らが巻き起こす旋風には、何ともすさまじいものがある。人間を恐怖に突き落とすものがある。
かの映画『バットマン』シリーズにそのようなシーンが出て来た。そのイメージが蘇る方々もおいでだろう。牙と蝙蝠。実にB級ホラー映画的組み合わせだ。これらに取って食われることなく、どう使いこなすか。それが我々に問われる知恵だ。
(はま のりこ・エコノミスト。2018年2月2日号)