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【憲法を求める人々】木村真(佐高信)
2018年3月5日6:25PM
昨年11月3日、大阪は中之島公園で開かれた集会に、木村は“ひとりチンドン屋”の格好で現れた。そして、小太鼓を鳴らしながら、
♪ 戦争アカン
原発いらん
と訴える。いわゆる運動家に見られる眉間に皺を寄せた深刻顔ではなく、剽軽(ひょうきん)ささえ漂わせた力(りき)みのなさが好ましい。
“Let,s go whistling under any circumstance”(どんな状況の下でも口笛を吹いて行こうや)というコトバが私は好きだが、木村は、やすし・きよしや、オール阪神・巨人の漫才を聞いて育ってきた。
「機動隊なんか屁でもないぞ」
と大声で叫びながら、彼らがドーッとやってくると、サッと逃げ、いなくなったら、また声をあげる。
こんな闘い方を続けたい、と木村は言う。
そんな木村に「一冊の本」を尋ねると、島田雅彦の『天国が降ってくる』(講談社文芸文庫)を挙げた。作品紹介によれば「パロディを駆使し、自意識を追究した島田文学の初期集大成」らしい。
ゴリゴリの硬派ではなく、いわば“やむをえず硬派”の木村が掘り起こした森友学園問題は、2016年5月23日に、豊中市議の木村が、問題の土地の登記簿を取ったところから始まった。
なぜ取ったか? 森友学園は塚本幼稚園を経営している学校法人で、この幼稚園は園児に教育勅語を暗唱させたり軍歌を歌わせたりするという歪んだ教育で知られているが、その森友がその土地に小学校を建てようとしているとわかったからだった。しかも名誉校長が安倍昭恵だという。
塚本幼稚園のホームページには講演に「お越しいただいた」先生として昭恵の他に櫻井よしこ、曽野綾子、百田尚樹らが挙げられていた。しかし、これらのセンセイ方は、“安倍友学園のアッキード事件”が発覚すると、知らぬ顔の半兵衛を決めこむ。
「右翼さんは冷たいなあ」
と木村は皮肉っている。
2016年8月末に「瑞穂の國小學院問題を考える会」を発足させ、「国有地を売却して金額は非公開、売却先の名誉校長は安倍昭恵」という見出しのビラをつくって配り始めた。反応は凄かった。
「これほんまか? とんでもない話やないか」
「私ら、戦争ではほんまに酷い目に遭うたから、戦争だけはこりごりやねん。こんな、教育勅語なんか教える学校が出来るの、私ら絶対嫌やわ」
こんな電話が次々に入る。
マスコミにも情報を流し、『朝日新聞』『毎日新聞』、共同通信、NHK大阪の記者が来たが、
「これはおかしい。独自に調べてみます」
と異口同音に言いながら、一向に報道してくれなかった。
「相手が相手だけに、扱い方が難しい。出し方を慎重に考えんと」
と弁明する社もあった。
しかし、木村より先に気づいて調べるのが記者ではないのか。
結局、ラチがあかないので裁判に踏み切ると、『朝日』をはじめ、NHK大阪も取り上げてくれた。
この問題で木村は「忖度という言葉で片づけられるのはおかしい」と強調する。
「森友問題の本質は、僕が考えるところでは、極右カルト学園に政権中枢が異常な便宜を図り利益を供与した、そこにこそあると思っています」と指摘する木村は、“やむを得ず硬派”から“常時硬派”に傾きつつある。
(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、2018年2月9日号。画/いわほり けん)