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〈パヨクの「選挙前移住」〉はフェイクニュース(西川伸一)
2018年3月6日7:00AM
2月4日投開票の沖縄県名護市の市長選挙は、新人の渡具知武豊氏が、現職の稲嶺進氏を破って初当選した。争点となった米軍普天間基地の同市辺野古沿岸部への移設計画について、渡具知氏は事実上容認し、稲嶺氏は反対の立場だった。渡具知氏を自民党、公明党、日本維新の会が推薦した。稲嶺氏を民進党、共産党、自由党、社民党、沖縄社会大衆党が推薦し、立憲民主党が支持した。
ウェブ上には、〈パヨクの「選挙前移住」は本当だった〉が、負けてざまあみろ的なネトウヨの書き込みが飛び交っている。「パヨク」とは左翼の蔑称である。「選挙前移住」とは、選挙前に住民票を組織的にある選挙区に移して一時的にそこの有権者になり、票の上乗せを図る選挙「戦術」をいう。名護市の有権者は1月27日時点で4万9372人で、4年前の前回の当日有権者は4万6582人だった。2800人近くも増えたのはおかしいというわけだ。
名護市の人口の増減は、毎月発行される名護市広報『市民のひろば』に出ている。公職選挙法の規定により、選挙期日の告示日(1月28日)の前日において引き続き3カ月以上名護市の住民基本台帳に記録されており、投票日に満18歳以上の人が有権者となる。『市民のひろば』には発行月の前々月末日時点での市の人口が記載される。そこで、市長選のほぼ3カ月前の10月末日の人口が載る『同』2017年12月号から遡って、市の人口の推移を月ごとにみていった。
その結果、急激で不自然な人口増があった月は確認できなかった。過去4年間の傾向として、人口は毎月基本的に微増を続けている。2月と3月に毎年合計で600人程度(14年は470人)の人口減があり、4月にはその減少幅に近い人口増があった。
前回市長選の投票日は14年1月19日である。およそ3カ月前の13年10月末日の人口は6万1829人なのに対して、昨年10月末日では6万2764人であった。この4年間で935人しか増えていない。ではなぜ有権者の増え方が人口の増分の約3倍になったのか。
もちろんその主な理由は、16年6月に有権者年齢を18歳に引き下げる法制度が施行されたことによる。〈パヨクの「選挙前移住」〉は明らかにフェイクニュースだ。
「選挙前移住」といえば、公明党・創価学会のお家芸であるとのまことしやかな噂がある。名護市長選では、前回自主投票だった公明党が今回は渡具知氏を推薦したことが結果を大きく左右した。加えて、今回は期日前投票者数が有権者の4割を超えて過去最多になった。それだけに、稲嶺氏の支持者にはこの噂を想起した向きもあろう。実は私もその一人だ。しかし、それは「引かれ者の小唄」であることが上記の調べでわかった。
元公明党委員長でのちに公明党・創価学会と対立する矢野絢也氏は、噂をこう否定している。「私の知る限り、学会の指示による、そのような事実はなかった。(略)熱心な学会員が、勇み足で選挙のために住民票を移している場合があるかもしれないが」(矢野絢也『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』講談社)
「数が(殺人を)神聖化する」とはチャップリンの映画『殺人狂時代』の名せりふである。数をよく吟味して数を「世俗化」することこそフェイクを暴く力になる。
(にしかわ しんいち・明治大学教授。2018年2月16日号)