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「低認知被害」――
福島原発事故から7年の課題
被害が不可視化される構造とは

2018年3月7日10:59AM

「低認知被害」を説明する清水奈名子宇都宮大国際学部准教授。(撮影/岩崎眞美子)

2月9日、宇都宮大学で「原発事故7年目の課題を考える」公開シンポジウムが行なわれた。基調講演のテーマは「不可視化される低認知被害」。福島第一原発事故から7年、社会ではすでに忘れられたかに見える放射能汚染や被曝の問題が、現実には未解決のまま山積しているにもかかわらず、なぜこんなにも社会に認知されにくいのか。その「不可視化」の構造を示していく試みだ。

冒頭に宇都宮大学国際学部准教授の清水奈名子氏が「低認知被害」を「社会的認知度が低く制度的にも十分な対策が講じられていない被害状況」と定義。その低認知がさらに誤解や偏見、無関心という「不可視化」を生んでいると指摘。続けて、いまだ高い数値を示す栃木県内採取のキノコなどの汚染状態や、事故直後の放射能飛散状況による初期被曝の危険性などを示し、栃木県の放射能汚染被害に対する「低認知」を指摘した。

続いて茨城大学人文社会科学部教授の原口弥生氏が、茨城県における初期被曝や汚染の状況と、県内の避難者、特に低認知な存在である自主避難者の現状について報告。家族とともに新潟県に自主避難している福島大学行政政策学類准教授の荒木田岳氏は「避難区域外、もしくは福島県境を超えたとたんに、公的支援や国の調査からこぼれ落ちてしまう『低認知被災者』がいる。この認知の問題は、賠償の問題と連動している」と語った。

報道不足、教育不足により被害が社会的に認知されない状態(低認知・未認知)は、補償や支援制度の対象と認めない国や行政の不作為を後押ししている。その「不認知」が、この被害者は「本物の被害者」ではない、という差別(非認知)を生み出している。

福島原発事故から7年。被害の矮小化、不可視化による支援・賠償の縮小が加速している。この構造を理解することは、問題顕在化のための重要な鍵となりそうだ。

(岩崎眞美子・ライター、2018年2月23日号)

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