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宇佐神宮訴訟で「矛盾判決」
パワハラ認定も解雇は有効
2018年3月8日12:07PM
全国に約4万4000社ある八幡宮の総本社である宇佐神宮(大分県宇佐市)から解雇されたのは不当だとして、宮司を代々世襲してきた社家・到津家の到津克子さんが解雇無効などを訴えた裁判で、大分地裁中津支部(澤井真一裁判長)は2月13日、到津さんに対する宇佐神宮側の数々の嫌がらせを「人格的利益を侵害した」とし「不法行為に基づく損害賠償」の請求を認めたものの、「解雇は有効」との判決を出した。
到津さんは2008年7月に当時の責任役員会から、神社を統括する宮司に選任されたが、神社本庁(田中恒清総長)がこれを拒否し、本件訴訟の被告でもある穴井伸久大分県神社庁長(当時)を「特任宮司」として宇佐神宮に送り込んだ。その人事の不当性をめぐる裁判は最高裁まで争われたが、到津さん側の敗訴が確定(13年5月)。今回の裁判は、その翌年(14年5月)に当時ナンバー2の権宮司の職にあった到津さんを監視、暴言、暴行などのパワーハラスメントの末に解雇したことの是非が争われたもので、前述のとおり解雇は認められたが、当時の穴井特任宮司と永弘健二権宮司、宇佐神宮に対しパワハラによる損害賠償として「連帯して110万円」の支払いを命じた。また、裁判では到津さんの居住する宇佐神宮敷地内の建物を明け渡せとの宇佐神宮側の反訴事件も争われたが、澤井裁判長は「到津家がこれまで保存継承してきた(略)宗教行為」は「消滅していない」などとし、到津さん側の使用権を認めた。
原告代理人の岡村正淳弁護士は「パワハラという人権侵害を認めながらも、そのような状況下で行なわれた解雇を認めるという矛盾した判決。宮司邸の使用権を認めたのは、雇用関係がなくなっても社家としての役割が残っているとの判断であり、これは容認できるものの、解雇を有効とした判断は認められず控訴する」と述べた。
(片岡伸行・編集部、2018年2月23日号)