現職自衛官の「安保関連法」違憲訴訟で新展開
国が最高裁へ上告
2018年3月9日12:16PM
現職の自衛官が、「戦争法(安全保障関連法)」の「存立危機事態」を名目とした集団的自衛権行使は憲法違反であり、「その行使としての防衛出動命令には従う義務がない」との確認を国に求めている裁判が、新たな展開を見せている。
一審の東京地裁は2017年3月、国側の主張に沿ってこの自衛官には「訴えの利益がない」として却下した。だが東京高裁はこの1月31日、逆に「訴えの利益はある」と一審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。ところが国側は2月14日、東京高裁判決を不服とし、最高裁に上告するという結果になった。
これについて、戦争法に対し全国21の地裁で違憲訴訟を起こしている「安保法制違憲訴訟の会」の共同代表である福田護弁護士は、「もし今回、国側が上告せずに東京高裁の判決が確定していれば、東京地裁での差し戻し審では戦争法が違憲かどうかの内容の審理に入る可能性があった。しかし上告審となったら高裁判決が妥当であったかどうかが争われ、一審で却下された原告適格が再び問われることになる」と指摘している。
つまり最高裁ではまた入口の論議となるが、国側が敗訴すれば一審での差し戻し審が確定し、そこでは戦争法が違憲かどうかの判断が示される可能性が残されている。しかし最高裁での行政訴訟で国に勝訴するのは至難で、一審同様に自衛官が「訴えの利益がない」と再び門前払いにされかねない。
だが、一審で国側が主張した原告不適格の根拠は、「『存立危機事態』での防衛出動命令の具体的な可能性があるとは言えない」という点だ。他方、安倍晋三首相は昨年の衆議院選挙前日の演説で「北朝鮮の危機」という名の「存立危機事態」を煽り、戦争法廃止を訴えるのは「無責任だ」と強調した。このため最高裁では、こうした政府の主張の使い分けが問われそうだ。
(成澤宗男・編集部、2018年2月23日号)