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朝鮮総聯中央本部にヘイト活動家らが撃ち込んだ銃弾
安倍首相が誘発したテロリズム

2018年3月12日4:19PM

銃弾が発砲され、ブルーシートに覆われている在日本朝鮮人総聯合会中央本部の門扉。2月23日。(撮影/編集部)

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル危機を口実に、北朝鮮の国家の崩壊を平然と口に出し、国内にいる在日朝鮮人の人権弾圧と生活基盤の破綻政策を強化している安倍政権下で、ついに起こるべくして在日朝鮮人を狙ったテロが発生した。

2月23日午前3時50分ごろ、2人の男が在日本朝鮮人総聯合会中央本部(東京都千代田区富士見)の会館正面の通用門に向けて数発の銃弾を撃ち込むという衝撃的な事件が発生した。

犯行に及んだのは過激なヘイト活動歴を持つ桂田智司(56歳)と神戸山口組系に所属していた元暴力団員の川村能教(46歳)の2人。警視庁によると、ワンボックスカーで現場に乗りつけ、川村容疑者が助手席から発砲、警戒中の機動隊員に建造物損壊容疑の現行犯でその場で逮捕されている。また総聯の関係者の話では「発砲した後、拳銃を警察官に自ら差し出してすんなりと逮捕された」という。

事件発生時、著名な右翼関係者に桂田容疑者のこうした行為を聞くと「皇太子殿下の誕生日という日にピストルを撃ち込むなんて、右翼ならば絶対にしないし、皇室に迷惑がかかるようなことはしないよ」と指摘。さらに「元ヤクザが拳銃でかち込みみたいなことをして、しかもその場で逮捕されているけど、元ヤクザとはいえヤクザにとって拳銃まで撃ってその場で逮捕なんて、懲役のことを考えると計算に合わないでしょう。いったいなんのメリットがあったのか不思議な行動に見えます」とはある警察官の見方だった。

被害を受けた総聯本部の南昇祐副議長は、23日午後の記者会見で「私たちは、これまで日本当局に対し、朝鮮総聯に対する政治的弾圧と規制をとりやめ、右翼などの脅迫と嫌がらせを厳しく取り締まるよう重ねて強く求めてきた。にもかかわらず、朝鮮総聯に対する今回のようなテロ行為を未然に防ぐことができなかった日本当局は、その責任を免れることはできない」と激しく批難した。確かに、在日朝鮮人の子どもたちの身辺の危険性が指摘されるようになったのも、特に安倍政権下での特質。それにしても今回の拳銃テロは何を狙ったというのだろうか。

【在日朝鮮人の生命の危機】

昨年12月の桂田容疑者のブログに今回の犯行を予告するかのような文面がある。

「『一発の銃声は十万の動員に勝る』とは、正にこの事である。百の正論より一つの行動こそが、国を救う唯一の道なのである。行動なき正論は無力に等しい。若人よ、後に続け!」

ほとんど無差別テロ敢行を意図しているとも読める。さらに桂田容疑者と川村容疑者の2人が朝鮮総聯中央本部前で逮捕され身柄を護送された後に、なぜか別の1台の車が玄関前に数時間も横付けして動こうともしなかったというのだ。その車を運転していた男が桂田容疑者らの仲間か否かは不明だが、その場で警戒に当たっていた警視庁の警備警察官がなぜその車を撤去させようとしなかったのか、これも不思議だという指摘もある。

桂田容疑者のブログは拳銃テロの予告だったと読めないこともないが、ではその標的はいったい誰だというのか。「総聯中央の幹部だろう」と言った知人の記者もいれば、「いや議長を狙うというメッセージだろう」と言った別の記者もいた。少なくとも桂田容疑者自身は今回の逮捕でしばらくは不可能だろうが、桂田容疑者の周辺のネット右翼活動家やヘイト活動家の誰かが、今回の出来事に触発されて行動する可能性も否定できない。

しかし、ここからが深刻な分岐点だ。もしこうした活動家や個人を野放しにしておいたら、やがて在日朝鮮人の命に手をかけるといった悲劇も現実になるだろう。その場合、日本政府はなんと言うのだろうか。今回の拳銃テロに対しても菅義偉官房長官が何かを言っただろうか。一言も言わないではないか。「北朝鮮破壊主義者」の安倍首相のことだ。在日朝鮮人の人権や命の危機については、「我関せず」というのだろうか。

(成田俊一・ジャーナリスト、2018年3月2日号)

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