【憲法を求める人々】田鎖麻衣子
佐高信|2018年4月3日6:36PM
私が、
「他人のことではなくて、自分のこととして捉えるわけだ」
と言ったら、
「むしろ、他人のことだと思っていたらやってられないですよ」
という答えが返ってきた。
しかし、これでは稼げない。
「これまで、職業は弁護士と言われることに、ずっと違和感があったんですよ。確かに肩書きは弁護士なんですが、これで食べていないから、職業じゃないな、と。それではっと思ったんです。これはボランティアを業としているんだ! と」
このことに最近気がついたらしい。ただ、死刑廃止をがんばっていると、ヨーロッパは評価してくれ、センターはEUの欧州委員会から少し助成金をもらっている。
日本政府からはもちろんなくて、『産経』などからは非国民扱いされているという。
しかし、世界ではもう3分の2が死刑廃止である。私が田鎖を知ったのは、多分、“死刑弁護人”の安田好弘を通じてだった。安田が死刑廃止運動の中心人物として不当に別件逮捕された時、田鎖はその救援に駆けずりまわっていた。
『ヤクザと憲法』で取り上げられた川口和秀のこともよく知っている。
「大阪のヤクザでしょ? 面白いおっさんです。府中刑務所に入っている時に面会もしました。そしたら、出所の時に挨拶に来てくれましたね。伝統的な、絶滅危惧種のヤクザですよね」
田鎖はこう語っていたが、「ボランティアを業としている」彼女も十分に“絶滅危惧種”の仲間に入るだろう。
「私はどちらかというと、内向的なので書いたり発表したり、メディアに出たりというのは嫌だったんですよ。でも発信しないと、“やっぱりね、そらみたことか”と心の中で思うだけの捻くれたいじわるおばさんになってしまう。ちょっと無理してでも、何かやらなくちゃいけないかな、とここ1年くらい思い始めているんです」
出たがりの人間の言葉は軽くて薄い。内向的な人間の言葉こそ重いのだから、「無理してでも」発信してほしい。
ちなみにセンターの代表は海渡雄一である。
(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、2018年3月9日号。画/いわほり けん)