イラク日報隠蔽問題で“官邸関与説”が浮上
横田一|2018年4月23日12:45PM
防衛省のイラク日報隠蔽問題で、森友文書改竄問題同様の“官邸関与説”が浮上した。「防衛省と官邸の口裏合わせ(公表先送り)」が疑われているのだ。
3日の野党合同ヒアリングでは、防衛省の鈴木敦夫・統幕監部統括官が経過を説明したが、公表まで2カ月半以上も要したことに疑問が噴出。「陸上幕僚監部」がイラク日報を見つけたのが今年1月だったのに、「統合幕僚監部」への報告は2月27日、小野寺五典防衛大臣への報告はさらに1カ月以上も後の3月31日。しかも新年度予算が成立した3日後であったことから、「衆参予算委での追及をかわすために報告を遅らせたのではないか」と小西洋之参院議員(民進)ら出席議員が問い質した。
小西氏は「推論」と断りながらも官邸と防衛省が“共謀”した隠蔽工作の可能性を指摘した。
「すでに南スーダン日報問題を起こしている防衛省は当然、『省内で抱えきれる問題ではない』と判断して官邸に報告、相談したのは間違いない。その結果、『公表は待ってくれ』と官邸から指示された可能性は十分にある。森友文書改竄でも関与が取り沙汰された今井尚哉・総理秘書官が『森友文書に加えて、防衛省のイラク日報問題まで出たら内閣が持たない。予算が成立した後にしてほしい』と指示したのではないか」
【国会欺き大臣責任論も】
森友文書改竄と同様、イラク日報隠蔽も国会を欺く行為であった。後藤祐一衆院議員(希望)はこう指摘した。
「去年2月2日に『南スーダンの日報はないのか』と質問した直後に『他の日報もすべて予算委員会に提出して下さい』と私は要求、予算委員会理事会マターになっていた」
財務省の改竄文書も、参院予算委員会で野党が森友問題を追及する中で予算委員会理事会の総意として文書提出を昨年3月に要求、国会に提出されていた。イラク日報問題でも国会を欺いた安倍政権に対し、総辞職を求める声が一層強まっても不思議ではない。
日替わりの説明と謝罪を繰り返す小野寺防衛大臣の責任論も出始めた。森友問題を野党が徹底的に追及していた最中の3月20日、先の小西氏は参院防衛委員会で「防衛省は南スーダンの日報問題もあったし、どういう認識なのか」と質問すると、小野寺大臣は「3月12日に情報公開・文書管理の重要性を改めて認識し職務にあたるように省内幹部に指示した」と答えていたのだ。だが、12日は、イラク日報が発見されたことを防衛省幹部が知りながら大臣に報告してなかった時期。小西氏が「防衛省幹部が寄ってたかって小野寺大臣を騙したのではないか。『大臣に報告もせずに、(12日の)大臣の指示を欺き、国会を騙すようなことをやっていた』という認識はないか」と鈴木統括官を問い質す一方、省幹部にコケにされた防衛大臣に対しては「監督責任は免れない。この一件を持って大臣は辞職すべきだ」と強調したのはこのためだ。
5日のヒアリングでは、イラク自衛隊派遣の同行取材をした元TBSの杉尾秀哉参院議員(民進、当時。その後民進を離党。12日、立憲民主に入党)が防衛官僚の説明に呆れ返った。
「現場に自衛隊員の皆さんといた時、ロケット弾が飛んできた。異常な緊張状態だった。帰還後、公式発表だけでも30人の自衛隊員が自殺されている。人の命までかけた派遣で『非戦闘地域』という概念まで作った初めての派遣の記録について今、『意識して残すものだったかどうだったか』などと発言したが、意識して残すものであることが当たり前。自衛隊員の命をかけた歴史的文書。克明に内外で起きたことが記されている日報だ」と批判したのだ。
「シビリアンコントロールが崩れている」などの批判が強まる中、防衛省は「政務官を中心とした調査チームが調査をする」と発表したが、すぐさま野党は「身内の内部調査ではなく、第三者による調査を行なうべきだ」と反論。稲田朋美元大臣らの国会招致も求めている。甘い内部調査で幕引きを図ろうとする安倍政権と野党の攻防は激化する一方なのだ。
(横田一・ジャーナリスト、2018年4月13日号)