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誇りと気概を失った財務省の没落

西谷玲|2018年4月24日7:13PM

財務省が森友学園との土地取引をめぐる決裁文書の改竄問題で大揺れだ。先日行なわれた佐川宣寿氏の証人喚問は消化不良というか、佐川氏の鉄の守りで事実はほとんどわからず、ある意味、組織を守る官僚の見本とも言えた。一連の出来事を見ていて感じるのは、財務省という中央官庁の没落である。

かつて財務省が大蔵省だったころ、大蔵官僚たちは自分たちこそが国を支えているのだという誇りに満ちあふれていた。国の予算を司る主計局、税を司る主税局など、主たる畑を持ちながらもあちこちの部署を渡り歩いてゼネラリスト的に全般的な視野を持つキャリア官僚たち。

一方、ノンキャリたちは一生一分野とでもいうように自分の専門業務を持つ。それは非常に細分化され専門化され、職人芸とでもいうように研ぎ澄まされ、それが彼らの強みとなった。ある意味迷宮の案内人のような存在となって、キャリアはノンキャリなしでは仕事ができないときも多々あった。

キャリアは若い頃から税務署長などもやって、よく言えば帝王学やリーダーシップ、そうでなければちやほやとカゴの上に載せられて、自分たちは特別なのだ、選ばれし者なのだという意識を持つよう育てられていった。

はっきり言って大蔵官僚たちは、他の省庁を(不穏当な表現をすれば)屁とも思っていなかった。自分たちと一緒にするな。国の歳入と歳出をつくる自分たちは特別なのだ。頭の出来も、やっていることもまったく違うものなのだ、と。

いや、他の省庁ばかりではない。

政治家に対してもそうだった。大蔵省そして財務省の政治との距離は他の役所とは比べものにならない。国の予算をつくっているから、政治家は大蔵省と近づきになりたいし、大蔵官僚たちも政治の力を利用したい時がある。逆に大蔵省は税を司っているから、政治家の税金まわりはおさえており、いざという時にはこれが使える。

国を支えている、つくっているのは国会議員などではない。自分たちなのだと馬鹿にしていた。しかし頭のいい彼らはそんな様子をおくびにも出さない。あくまでも表面的には先生先生、と持ち上げ、ほめそやし、たてる。しかし内実はまったくそうではなかった。このあたりの彼らのマインドは、テリー伊藤の名著『お笑い大蔵省極秘情報』(飛鳥新社)に詳しい。

そこに、1998年の接待汚職が起きた。大蔵省に東京地検の特捜部が乗り込み、逮捕者が出た。彼らのプライドはずたずたになり、世間の信頼も地に落ちた。

その前年、97年に大蔵省に入省したぴっかぴかのキャリア官僚たちは、入省間もない頃の自分たちの組織の体たらくを目にして、落胆し、失望し、3分の1以上が役所を去っていった。

それから組織の「改革」が行なわれ、もはや若くしての税務署長はなくなった。だが、とびっきりの人材は、以前ほど財務省には集まってきていないように見える。そして、政治への態度も、時に必要以上にへりくだり、おもねっているように映る。今回の一因もそこにあるのではないか。

この騒動でさらにそれに拍車がかかるのだろうか。尊大で偉そうな態度や意識は必要ない。しかし、国を支えているという志と気概は絶対に必要なものだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、2018年4月6日号)

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