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経済財政諮問会議、
安倍首相に忖度

高橋伸彰|2018年4月25日4:03PM

「5年にわたるアベノミクスにより(中略)大きな成果が生み出された。しかし(中略)いまだ道半ばである」。この3月29日に経済財政諮問会議で報告された「経済・財政一体改革の中間評価」におけるアベノミクスの「総括的評価」だ。普通に考えれば5年経っても当初の目標を達成できない政策は「道半ば」ではなく失敗である。いわんや、「大きな成果」を生みだしているなど詭弁にすぎない。

実際、「GDPの増加、景気回復の長期化」が「大きな成果」なら、経済成長の実現は「道半ば」ではなくゴールに達しているはずだ。また都合6回、当初の計画から4年も達成時期が先送りされている2%の物価上昇目標など「道半ば」ではなく、明らかに失敗ではないか。こうした理解に苦しむ評価が諮問会議でまかり通るのは、安倍晋三首相に対する「忖度」以外の何ものでもない。

諮問会議の本丸である財政再建に関しても2015年7月の同会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」では、2018年度の基礎的財政収支の赤字は対GDP比で1%、金額では5.6兆円に縮小する見込みだった。ところが今回の中間評価では同2.9%、同16.4兆円と赤字が拡大し、2020年度までに赤字をゼロにする計画も撤廃された。それにもかかわらず、中間評価では社会保障給付の削減を中心に3.9兆円の歳出が効率化されたと強調する一方、成長低下に伴う4.3兆円の税収減や消費税率引き上げの延期による4.1兆円の減収、さらには補正予算による2.5兆円の歳出増については政府の責任を求める記述はみられない。

言うまでもなく財政再建が進まないのは安倍首相が過大な成長目標を掲げ抜本的な対策を怠ってきたからだ。実質2%程度、名目3%程度の持続的な成長が不可能なことは、バブル崩壊後の4半世紀にわたる日本経済の実績が証明している。だから今回の中間評価を受け『朝日新聞』(3月30日付朝刊)は「アベノミクス皮算用の限界/成長率見込み過大」と報じ、『日本経済新聞』(同)も「高成長前提に限界」と見出しを掲げ成長依存の財政再建に批判的な記事を掲載したのではないか。アベノミクスの評価に関し見方が異なる両紙が、今回の報道で一致したのは成長で再建できるほど日本の財政赤字が軽症ではないからだ。

歴史的にも、国際的にも最悪の財政赤字を抱えた日本にとって財政再建は待ったなしの政策課題である。そのために誰にどのような形で負担を求めるのか、また誰に対するどのような給付を削減するのかをめぐっては、階層間や世代間で世論が二分するむずかしい選択であることは理解できる。ただ、合意に向けた努力や協議もせずにアベノミクスの欺瞞を放置すれば、そのツケは倍加して将来世代に回されてしまう。

自らの誤りを認めず持論に固執する安倍政権の暴走を止めるには、「反安倍」を軸にした与野党を超える共闘が必要ではないか。そうでなければ現行の小選挙区制の下では、たとえ有権者全体の支持率は低くても、与党の多数を握る自民党総裁という名の権力者がすべてを牛耳ってしまうのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。2018年4月6日号)

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