森林環境税(仮称)は二重課税
鷲尾香一|2018年4月28日8:00AM
昨年末、2018年度税制改正大綱に「森林環境税(仮称)」と「森林環境譲与税(仮称)」の創設が決まった。何度も浮上しては継続審議となっていたが、「森友学園問題」で予算委員会が紛糾する間隙を縫って、ほとんど審議もされないまま成立した。
森林環境税(仮称)は、個人住民税の均等割の納税者から、国税として1人年額1000円を上乗せして市町村が徴収する。税収については、市町村から都道府県を経由して国の交付税および譲与税配布金特別会計に入る。
個人住民税均等割の納税義務者が全国で約6200万人いるので、税の規模は約620億円となる。時期については、東日本大震災の住民税均等割の税率引き上げが23年度まで行なわれていること等を踏まえ、24年度から課税される。
一方、森林環境譲与税(仮称)は、国にいったん集められた税の全額を、間伐などを実施する市町村やそれを支援する都道府県に客観的な基準で譲与(配分)する。森林現場の課題に早期に対応する観点から「新たな森林管理システム」の施行と合わせ、課税に先行して、19年度から開始される。
譲与税を先行するにあたって、その原資は交付税および譲与税特別会計における借入により対応することとし、譲与額を徐々に増加するように設定しつつ、借入金は後年度の森林環境税(仮称)の税収の一部をもって償還する。譲与額を段階的に増加させるのは、主体となる市町村の体制の整備や、所有者の意向確認等に一定の時間を要すると考えられることによるもので、19年度は200億円から開始することとなっている。
だが、森林環境税には、大きな問題点がある。
第一に、都市部住民は森林環境税を支払っても、森林整備に対する受益がほとんどない。実感を得られないものに対する納税となる。第二に、森林環境税は、林業など特定の業種に対する補助金のような性質を持ち、特定の業種だけにメリットがある。補助金であるならば、予算から割り当てるのが原則で、国税としての徴収は問題がある。第三に、すでに地方自治体が導入している森林環境税との棲み分けや区分をどうするのか。二重課税になるのではないか、という点だ。
すでに、40近い県が森林環境税を導入している。各県の森林環境税は、県民税の超過課税である。超過課税とは、地方税法上で定められている標準税率を超える税率を条例で定めて課税する方式で、簡単にいえば、県民税に森林環境税が上乗せされたかたちのものだ。しかし県民税は使途が特定される目的税ではなく普通税のため、当時から「森林環境税が、本来の目的外の用途に使われるのではないか」という問題が指摘されていた。
そこに環境省や林野庁がほぼ同様の目的の「森林環境税(仮称)」を創設しようとしており、明らかな二重課税だと言えよう。
国民が無関心とはいえ、わずか年間1000円の増税だとしても、国会が森友問題で揺れるなかで十分に審議されることもなく増税が決まった。それも、東日本大震災の復興関連増税が終わった後に、森林環境税を導入するという姑息な方法だ。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2018年4月13日号)