再春館製薬所トップがパワハラか
バド部元監督・今井氏による告発文書を入手
週刊金曜日オンライン取材班|2018年5月2日5:39PM
「詫びの会」を開催し、ビデオ撮影
関係者によると、約半年間の「研修」を終えた昨年の7月末頃、再春館製薬所は今井氏による「詫びの会」を催した。社長・監督・コーチ、会長・副会長、選手・コーチをそれぞれ回り、今井氏が反省の弁を述べる“儀式”だ。
今井氏はその場で「謝罪」「会社への感謝」そして「現在の監督・コーチの方針に従う」という趣旨のことを述べたのだが、会社は事前に「こういうことを言うように」とワープロ書きの紙を今井氏に渡していた。今井氏は言われるがままに口を開いただけだった。「あれは彰宏さんの言葉じゃない。見ていて辛かった」とこぼす選手もいた。しかもその儀式、部外の総務、労務、広報まで来てビデオ撮影まで実施した。今井氏が会社にひれふす姿を記録に残そうとしたのだろうか。
こんなこともあったという。今井氏がバドミントン部に復帰した後のある日、部のコーチとともに食堂にいた際、西川通子会長を見かけたため会釈をすると、会長も軽く手を挙げたという。ところがその直後、会長室の室長がやってきて「伝言です。会長は吉富コーチに挨拶しただけで、あんたにはしとらんから」とわざわざ言いに来たそうである。
会社トップがやっているのは小学校や中学校のいじめっ子レベルである。今井氏が会社側に送った内容証明には他にも事例が続く。
もう1点、再春館製薬所が選手の「引き抜き」について神経質になっていることにも触れておかなくてはならない。
東京五輪のメダル候補である福島・廣田ペアはすでに再春館製薬所に辞表を提出し、今井氏のいる岐阜トリッキーパンダースに5月1日に加入した。これについて再春館製薬所の顧問弁護士は今井氏に以下の文書を送っていた。
〈弊社は、山口茜、福島由紀、廣田彩花などバドミントンの国内有望選手を多数抱え、来る2020年東京オリンピックに向けて/会社を挙げて取り組んでいるところであり、そのことは貴殿もご認識しているはずです。にもかかわらず、漏れ伝わってくるところによれば、貴殿は、弊社在職中から弊社の大事な選手を唆して弊社から引き抜き、貴殿が監督を務められることになった「岐阜トリッキーパンダース」に移籍させようと画策されているということのようです〉
これが事実であれば、として、文章は次のように続く。
〈貴殿の上記画策が実現するようなことがあれば弊社の損害は極めて重大なものとなります。/それゆえ、弊社は、断固として貴殿のその画策を排除するつもりであり、そのためにはいかなる法的手段も辞さない覚悟です〉
そしてこう結ばれる。
〈貴殿もご承知の通り、弊社は弊社バドミントン部と所属選手に対して多額の投資をしており、貴殿による上記の不法行為が実行された場合の弊社が蒙る損害は莫大なものになると思われます。/その損害についてはきちんと賠償してもらいますので、よくご認識ください〉
要するに、再春館製薬所のバドミントン部に所属する選手が今井氏のいるチームに移籍してしまった暁には、多額の損害賠償を請求する可能性に踏み込んでいるのだ。
「唆し」「引き抜き」「画策」について今井氏はいずれも全面否定している。スポーツ選手の寿命は短く、短い時間をどのチームで勝負するかを決めるのは選手個々人だ。憲法22条第1項には職業選択の自由も謳われている。