『憲法手帳』のメッセージ再び
沖縄から見える日本
岩崎眞美子|2018年5月11日11:37AM
4月7日、沖縄戦の史実歪曲を許さず沖縄の真実を広める首都圏の会主催で、琉球大学法科大学院の高良鉄美氏の講演「憲法と沖縄と私たち」が開かれた。
参加者は約100人。冒頭で高良氏は小さな青い手帳を掲げた。46年前の1972年5月15日、本土復帰の日に沖縄で発行された『憲法手帳』だ。この小さな冊子は、平和憲法下の日本から取り残されていた沖縄が本土に向けた、きわめて重要なメッセージだった。
「25年のブランクの間、沖縄がずっと理念として持っていた日本国憲法。しかし『復帰』した日本では、すでにその憲法は形骸化していました。この『憲法手帳』の発行者は沖縄県憲法普及協議会。しかし普及させるのは沖縄ではない。本土にもう一度憲法を普及させることが本来の目的だった」
そして今も、「沖縄から見れば日本がよく見える」と高良氏。基地の押しつけ、切り捨て、分断、名護市長選で特に顕らかだった地方自治への国権介入……。沖縄の問題は日本の問題の縮図であり、日本の虚構や不公正はいつも、沖縄の発信によって示されてきた。だが今やオスプレイは首都圏にも配備され、憲法9条には自衛隊が明記されようとしている。
「以前は、沖縄を日本から外して基地を置き、日本を非軍事化していました。しかし今は、沖縄にあわせて日本を軍事化しようとしています。沖縄が9条から外されていたように、今、日本全体が9条から外されつつある」
憲法に従った政治ではなく、自分たちの政治に憲法を従わせようとする現政権の下で、憲法改悪の準備が着々と進められている。
「立憲主義意識のない政府の横暴に抵抗することは憲法が主権者に求めていることです。請願やロビイング、違憲訴訟や情報公開請求など、司法、立法、行政三権から訴えかける。主権者は強いのです」
最後に『憲法手帳』を再び掲げ、高良氏はそう強く訴えた。
(岩崎眞美子・ライター、2018年4月20日号)