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新潟知事選、自民党・二階幹事長が目論むステルス戦略
横田一|2018年5月21日11:50AM
柏崎刈羽原発再稼働を左右するだけでなく、安倍政権の審判も問う与野党激突選挙になると見られている新潟県知事選(5月24日告示・6月10日投開票)の候補擁立の動きが活発化している。
争点隠し選挙が得意の安倍自民党は、元新潟県副知事で海上保安庁次長の花角英世氏をすでに本命視。米山隆一知事辞任会見の2日後の4月20日には、二階俊博幹事長が新潟県連会長の塚田一郎参院議員と党本部で面談、「政党色のない候補者選定」という方針で一致した。地元記者は「自公系候補を超党派の県民党候補に粉飾する茶番劇」と内情を暴露した。
「自公推薦候補が敗れた前回の教訓を活かし、自民党県連は候補擁立手法を真似した。米山氏に出馬要請をした『新潟に新しいリーダーを誕生させる会』に似た市民団体『新しい新潟を考える会』を27日に発足させて自公県議や各種団体が参加。花角氏待望論を口にする政治ショーを演出した。キャッチフレーズは『県民党』です」
実際、自民党県連の柄沢正三幹事長は「与野党対決だと、県政が混乱する。頭を冷やしてほしい」と強調。原発再稼働が争点の与野党激突の構図を避けようとする狙いは見え見え。名護市長選でも陣頭指揮を取った百戦錬磨の二階幹事長のシナリオは、“自民党別動隊”の「考える会」を立ち上げ、党本部がお墨付きを与えた花角候補が地元の要請で出馬したかのような印象を与えるということだ。
【問われる野党第一党】
「花角氏擁立ありき」のショーを着々とこなす自民とは対照的に、野党の候補擁立は難航。4月28日付『産経新聞』は「無所属の菊田真紀子衆院議員(48歳、新潟4区)を統一候補として擁立する方向で調整に入った」としたが、菊田氏は29日のブログで「国政に専念し、安倍政権と厳しく対峙する以外の選択はありません」と否定。
「現職の菊田氏が知事選に出ると、新潟4区の衆院補選を行なうことになり、前回は敗れた自民党の金子恵美・前衆院議員が議席を奪還する可能性が高く、菊田氏の出馬は難しい」(野党幹部)。「地元で待望論が出ている元改革派経産官僚の古賀茂明氏と、前回の県知事選で擁立寸前までいった『原発ホワイトアウト』の著者である現役霞ヶ関官僚も名前が上がっていますが、説得は難航している」(地元記者)。
筆者が立憲民主党の枝野幸男代表に「(知事選で)野党第一党としてどういう呼びかけをしていくのか」と会見で聞くと、「野党統一候補擁立が好ましい」という考えを述べた上で、こう続けた。
「地方の首長選挙は少なくとも表立って(政党が)主導するべきではないことも従来から申し上げている。原発政策において考え方が共通する皆さんが地域において、さまざまな努力の中で有力な一本化された候補者を擁立するような流れをわれわれはお待ちする」
野党系候補擁立が難航すると思われていた8日14時、菊田氏が池田千賀子県議と共に県庁内で緊急会見。冒頭で菊田氏は自身ではなく、説得した池田氏が県知事選に無所属で出馬することを発表した。森友加計問題で官僚が安倍政権に忖度している現状を指摘した上で官僚出身者が知事になると政府の言いなりになる恐れがあると菊田氏は強調。すると、池田氏も「柏崎刈羽原発が再稼働となる恐れがある」と危機感を共有、「福島原発事故の検証が終わらない限り再稼働はしない」という米山県政継承の立場も明らかにした。
掲げるのは「県民党」。自公陣営と同じキャッチフレーズであることについては「出馬要請の経緯を見れば、背後に誰がいるかは明らか」(池田氏)として原発推進の安倍自民党が担ぎ出そうとする官僚出身者との違いを浮き彫りにした。米山県政継承の県民党候補が出馬表明、それを野党が応援する形を先んじて作り上げたのだ。
野党第一党の代表として枝野氏が池田氏をどう支援するのかが注目される。今井尚哉首相秘書官が仕切る“原子力ムラ内閣”に「再稼働反対」「安倍政権ノー」の民意を突きつける機会を活かせるのかが問われているのだ。
(横田一・ジャーナリスト、2018年5月11日号)