ナビとツイッター
小室等|2018年5月29日6:52PM
大阪・天神橋にあるFM COCOLOのスタジオで大塚まさじさんの「MOONLIGHT MAGIC」に出演した後、「ゆめ風基金」(阪神・淡路大震災後に災害時の障害者を支援する目的で永六輔さんを呼びかけ人代表として設立された認定NPО法人。現在、呼びかけ人代表は筆者が受け継いでいる)代表理事・牧口一二さんたちと会食するためにタクシーで上本町の中華料理店を目指す。
ナビに誘導してもらい目的地周辺に到着するも、店がどこかは特定できないまま降車。すかさず、随行というより最近は老人介護というべき娘のゆいがスマホでナビ。情報によれば店の目の前にケンタッキーがある由。ナビの仰せのとおりケンタッキーも目的の店も確認できてめでたしだったが、何か気に入らない。何が気に入らないのか。多分、自分がナビの言いなりなのが気に入らないんだね。はい、駄々をこねている老人であります。
会食時もナビの話になり、同席の「ゆめ風」事務局長・八幡隆司さん曰く、「そやけど、災害地で場所を探し歩くとき、ナビにはほんま助けられる、必需品やね」。助けを待つ被災障害者にとって支援のナビは有効だ。
僕という老人にとってさらに手強いのが、ツイッター。そのツイッターを我が物顔で自分のメディアとしているトランプ。
ここのところでは、九日に北朝鮮で拘束の米国人三人解放と、一〇日には米朝首脳会談を六月一二日にシンガポールで行なうことを、マスメディアを通さず、いち早く自分のツイッターで公表。既存のメディアに対抗するための私的メディアとしてのツイッター。まずツイッター上で計画した台本を発表。出演者である解放された三人も金正恩も台本通りに物語を演じてゆく。侮れないトランプ。
「もしプレスが私のことを正確に、敬意を持って報じてくれるなら、私が“ツイート”をすべき理由ははるかに少なくなるだろう。悲しいことに、そんなことが起こるのかどうかわからないが」(トランプのツイート。『朝日新聞』HUFFPOST二〇一七年一月)
一般人のソーシャルメディアのはずだったツイッターをトランプは私的メディアとして操り、建て前としての〈嘘はつかない〉によって成り立っていた(そんなものはとうの昔に崩壊していたわけだけど)ジャーナリズムを、ツイッターでいとも簡単に破壊し去った。
トランプによってもたらされた「ポスト真実」の時代に、ナビが有効であることを受け入れながらも、われわれは注意深く真実を見極めなくてはね。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年5月18日号)