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佐藤優氏が分析する映画『マルクス・エンゲルス』
伊田浩之|2018年5月31日6:57PM
マルクス生誕200年の今年、映画『マルクス・エンゲルス』がヒットしている。上映館のひとつ、岩波ホール(東京・神田神保町)では5月21日、元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんを招いたトークイベントが開かれ、佐藤さんは「この映画は本当にマルクスが考えたことに近づこうとしている。思想的に言えば、反スターリン主義だ」と述べた。
この映画は、ドイツ、フランス、イギリス、ベルギーを舞台に、二人が『共産党宣言』(1848年)を執筆するまでの日々を描いている。
〈1840年代のヨーロッパでは、産業革命が生んだ社会のひずみが格差をもたらし、貧困の嵐が吹き荒れ、人々は人間の尊厳を奪われて、不当な労働が強いられていた。20代半ばのカール・マルクスは、搾取と不平等な世界に対抗すべく独自に政治批判を展開するが、それによってドイツを追われ、フランスへと辿りつく。パリで彼はフリードリヒ・エンゲルスと運命の再会を果たし、エンゲルスの経済論に着目したマルクスは彼と深い友情をはぐくんでゆく。激しく揺れ動く時代、資本家と労働者の対立が拡大し、人々に革新的理論が待望されるなか、二人はかけがえのない同志である妻たちとともに、時代を超えて読み継がれてゆく『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆく――。〉(映画公式サイトより)
トークイベントで佐藤さんは次のように話した。
「この映画には、社会主義という言葉が一度も出てきませんでしたよね。マルクスは著作で社会主義を1回ぐらいしか使っていません。エンゲルスはしょっちゅう使っている。社会主義とは、国家が貧困や格差の問題を解決しようとするが、国家に頼っていては貧困の問題や格差の問題、人間の差別の問題は解決できないと考えたのがマルクスの考えの特徴です。そこをよく描いている」
「この映画は、現代ではナンセンスだと考えられているプルードン(無政府主義者)や、シオニズムとの関係から無視されているモーゼス・ヘスをも描いており、マルクスが考えたことに近づけようとしている。スターリン主義に対するラジカルな批判となっています」
「それ(反スターリン主義)は、非常に強力な疎外論に基づく、本来の人間があるはずだ、という考え方。それは、いま私自身が人間的でない社会にいるから、いくら個人で人間であろうと思ってもそうはならない、ということです。映画で描かれるエンゲルスが、人間であろうとしても、資本家であることと人間であることは両立しない」
「共産主義を言い出したのはマルクスではなく、エンゲルス。この映画の原題は『若きカール・マルクス(THE YOUNG KARL MARX)』だが、邦題の『マルクス・エンゲルス』のほうが内容に即している。この映画はエンゲルス主導説なんです。共産主義という考え方や、マルクスの人間的な弱さを、そこを常に克服していたのがエンゲルスなんです」
労働者を働かせ放題にする「高度プロフェッショナル制度」の新設など、安倍晋三政権が「異次元の労働規制緩和」を進めようとしているいま、マルクスを学び直す価値はますます高まっている。
映画鑑賞とともに、マルクスの主著『資本論』に関する弊社の単行本にもぜひ目を通していただきたい。(3冊とも鎌倉孝夫さんと佐藤優さんの共著)
『はじめてのマルクス』https://www.kinyobi.co.jp/publish/000481.php
『『はじめてのマルクス』を読むために』(電子版のみ)https://www.kinyobi.co.jp/publish/001876.php
『21世紀に『資本論』をどう生かすか』https://www.kinyobi.co.jp/publish/002411.php