【タグ】二階俊博|新潟県知事選|枝野幸男|柏崎刈羽|池田千賀子|花角英世
新潟知事選、電力系労組抱える連合も反原発候補の支持表明
横田一|2018年6月4日10:49AM
世界最大級の東京電力・柏崎刈羽原子力発電所再稼働を左右するだけでなく、安倍政権の審判をも問う新潟県知事選(5月24日告示・6月10日投開票)で、与野党激突の色合いがさらに強まった。20日正午に野党第一党の立憲民主党(立憲)の枝野幸男代表が新潟市で街頭演説。「原発が争点になる選挙」と切り出し、原発立地地である柏崎市選出の池田千賀子県議が「原発を止めることと地域を活性化して雇用を守っていくことを両立させるため」の議員活動をしてきた経歴を紹介した上で、「こういうリーダーの下でこそ、原発ゼロは実現できる」と訴えたのだ。
与党系候補の元国交官僚の花角英世氏(二階俊博幹事長の運輸大臣時代の元秘書官)については、柳瀬唯夫元首相秘書官を引き合いに「まじめで優秀な官僚ほど権力に逆らえない」「上を向いて仕事をしているリーダーで県庁を中央(東京)の下請けにしてはいけない」と警告を発する一方、「草の根の暮らしに寄り添った政治を実現するために、県民の力を結集する時だ」と池田氏支持を訴えた。
約200人が集まった街宣では、立憲の西村智奈美衆院議員(新潟1区)、無所属の会黒岩宇洋衆院議員(新潟3区)、民進党県連、共産党や社民党関係者が並び、野党が結束して支援する態勢であることを印象づけた。
1年半前の県知事選では野党第一党の民進党が自主投票。選挙戦終盤に蓮舫代表(当時)が自主的に現地入りをする変則的な形となったが、今回はすぐに池田氏推薦を決めた立憲の枝野代表が告示前に応援演説。野党結集(選挙協力)をリードしようという意気込みが伝わってきたのだ。
【原発立地地のゼロ政策へ】
野党陣営の朗報は他にもあった。前回は自公推薦候補支援をした連合新潟が今回、池田氏の推薦を決定。20日昼前の事務所開きには、正午からの街宣に駆けつけた野党関係者が挨拶をしたが、連合新潟の牧野茂夫会長も加わっていたのだ。
「1年半前、連合新潟は『電力系労組を抱えているので再稼働反対の米山隆一氏ではなく、自民党推薦候補を支援した』と囁かれていましたが、今回は、立憲などの野党が国会に提出した『原発ゼロ基本法案』への支持も表明した池田氏への推薦を決定した。反発する電力系労組を説得したのでしょうが、野党系候補の推薦で決着した。これも画期的なことです」(県政ウォッチャー)
枝野氏の街宣でも、国策に翻弄されてきた原発立地地で働く電力系労組関係者らへの配慮が滲み出ていた。原発ゼロを叫ぶだけでなく、雇用を守りながら新たな産業に移行していく施策も進めると訴えたのだ。なお「原発ゼロ基本法案」も原発立地県の産業転換に伴う税金投入が盛り込まれている。
市民と野党が力を合わせる“新潟方式”を継承しながら、原発立地地にも受け入れられる原発ゼロ政策へとブラッシュアップ、連合新潟も加わりやすくなったといえる。全国のモデルになりそうな“新潟方式”は、さらに進化したのだ。
17日に新潟駅前で開かれた「安倍政権に退陣を求める緊急集会」でも、各野党関係者と市民団体代表が次々と支援を訴えた。最後に池田氏は、出馬決断の理由の一つが「他県では成し遂げてこなかった市民と野党の共闘」の存在であり、菊田まきこ衆院議員の“殺し文句”が「(候補が立てられないと)市民と野党の共闘の枠組みがなくなってしまうかもしれない。それでもいいの」であったことも明かした。そして原発再稼働問題がもう一つの理由と説明した上で、新たな理由が加わったと訴えた。「県知事選挙が国政に影響を与えないわけはない。大きな打撃を私たちのこの力で、新潟から国政の方に向かってパンチを繰り出していきたいと思います」。
これに対して花角氏は二階幹事長と連絡を取り合う密接な関係をアピール、中国地方から新潟を介して青森までの日本海側を結ぶ新幹線計画を提唱。さらなる交通インフラ整備を訴えている。
新潟県知事選が再び安倍政権に打撃を与えるのかが注目される。
(横田一・ジャーナリスト、2018年5月25日号)