「空き地」が大量放出される2022年問題
鷲尾香一|2018年6月4日5:21PM
不動産業界で言われている2022年問題をご存じだろうか。これは、「生産緑地」に絡んだ問題だ。
「生産緑地」とは市街化区域内の土地のうち「生産緑地制度」に沿って管轄自治体より指定された区域を指す。
1991年、市街化区域内の「生産緑地」について、固定資産税および相続税の課税が「宅地並み」から「農地並み」に引き下げられた。
都市部の農家に対して、その農地が宅地並みの固定資産税や相続税が課されていることが問題となり、税の優遇措置が取られたのだ。
この結果、生産緑地に指定されると、(1)固定資産税が一般農地並みの課税となる、(2)相続税の納税猶予の特例など──税制上特例措置が受けられることになった。
市街化区域内の農地も生産緑地登録を行なうことで、宅地並み課税から農地並み課税を受けられることから、生産緑地は全国の219自治体で約6万5000区画にまで拡大した。
一方、生産緑地に指定されるとこの指定を解除するのは難しく、基本的に「30年間」は指定を解除できない。さらに、土地の所有者または管理者は、“農地”として維持管理することが求められる。
生産緑地は、農地以外に利用できないし、その土地の中に建物を建てることもできなくなるのだ。
では、生産緑地の指定を解除するにはどうすればよいのか。条件は二つしかない。
一つはもちろん30年が経過することで、いま一つは土地所有者または主たる従事者が病気や死亡により、農業を継続できなくなった場合だ。
この生産緑地指定解除が後々、大きな問題になる。実際に指定を解除する場合には、生産緑地に指定した市区町村に土地を買い取ってもらうよう申し出ることが条件となっている。そして、市区町村が土地を購入せず、また、他に生産緑地として購入する者がいない場合には、その土地は生産緑地指定を解除され、普通の土地として扱えるようになるのだ。
この生産緑地の最初の指定が行なわれたのが1992年だから、30年が経過した2022年以降、生産緑地指定の解除が大量に発生すると見られている。
さて、これまでにも土地所有者または主たる従事者が病気や死亡により、農業を継続できなくなり生産緑地の解除手続きが行なわれた例は多々ある。
当然、制度に添えば市区町村に土地を買い取ってもらうよう申し出るわけだが、市区町村は「財政が厳しい」「利用価値がない」という理由から買い取りを行なっていないのがほとんどだ。
となると、生産緑地指定の解除が大量に発生する2022年以降、市区町村が、生産緑地として買い取りを行なわない可能性はきわめて高い。すると、指定を解除された生産緑地が市場に大量に放出されることになる。
日本は少子高齢化により、すでに空き家や空き地が社会問題となっている。このような状況の中で、大量の生産緑地が有効活用される可能性は低い。つまり、より多くの空き地が発生しかねないのだ。
「生産緑地」は、政(まつりごと)の失敗の典型例となる可能性がきわめて高そうだ。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2018年5月18日号)