京大に琉球人など267体の遺骨
返還求め提訴へ
土岐直彦|2018年6月13日9:40AM
戦前、人類学者らが沖縄の墓から持ち去った遺骨を保管している京都大学に対し、遺骨返還を求める訴えを今夏にも京都地裁に起こす動きが出てきた。琉球民族遺骨返還研究会の松島泰勝代表(龍谷大学教授)が5月20日、沖縄県内で開かれたこの問題に関するシンポジウム(琉球民族独立総合研究学会主催)で明らかにした。アイヌ民族関係の遺骨返還訴訟はあるが、琉球人遺骨では初めて。
同研究会が返還を求めるのは、昭和初期に沖縄県今帰仁村の百按司墓から採取されたとみられる26体。琉球王朝系列の按司(地方支配者)の代々の墓とされ、子孫や関係者、沖縄県内外に支援を求める集団訴訟にする構え。松島代表は「返還要求は先住民の自己決定権行使」とし、先住民の遺骨返還の権利を規定する「国連宣言」(2007年)に則って争うという。
百按司墓遺骨では、松島代表が17年8月、京大総長あてに遺骨返還の要望書提出と情報開示請求をしたが、京大は個別の問い合わせには応じないと返答。マスコミ取材も退ける対応をとってきた。
「遺骨」シンポは3人が登壇。松島代表は背景にあるのは「日本の植民地主義の問題だ」と指摘。国政調査権に基づき京大の保管状況を照会した照屋寛徳衆院議員(社民)は「プラスチック製の箱にご先祖の骨を収め、怒りがわいた」。『琉球新報』の宮城隆尋記者は「先住民族の人権を侵害し続けている」と捉えた。
奄美人の遺骨返還の最新の動きも報告された。鹿児島県奄美地方では今春、返還運動を開始。「京都大学収蔵の奄美人遺骨の返還を求める会」が遺骨を持ち去られた奄美大島、徳之島、喜界島で立ち上がり、5月18日付で国に早期返還の要望書、京大には返還要求書を送った。京大には3島計267体が保管されているとされ、3島の「求める会」を束ねる原井一郎事務局長は「琉球・アイヌ関係者と情報交換、共闘していく」と話す。
(土岐直彦・ジャーナリスト、2018年6月1日号)