豊洲移転問題でも文書改ざん、データ隠しの疑い
岩崎眞美子|2018年6月15日12:22PM
5月19日、豊洲市場土壌汚染問題を問い直す「専門家と市民による豊洲会議」が都内で行なわれた。
冒頭で、長年地盤沈下や液状化、地質汚染の問題に関わってきたNPO法人日本地質汚染審査機構理事長の楡井久氏が登壇。東日本大震災時の茨城県神栖地域地下水ヒ素汚染問題を例に出しながら、きわめて共通点の多い豊洲の地質に対して、科学的な地質調査が行なわれていないと指摘した。
「神栖では地震による流動化と地波で、地下水の汚染が拡大した。地下水も汚染物質も地層によって左右される。現在豊洲で行なわれている土壌調査は、地表から画一的に土壌を採取するもので、地層によって違う汚染部位を正確に把握することは不可能。調査過程で逆に汚染物質を拡大させている例も少なくない」(楡井氏)
地層ごとに汚染状態を病理解剖し、科学的に調査する「単元調査法」は汚染調査の現場で既に確立されている。なぜそれをやらないのか。楡井氏は、都知事が替われば数値も変わる都調査の汚染グラフを例にあげ、都の都合で科学的データすら変わる理不尽を指摘した。
続いて一級建築士の水谷和子氏が、都の汚染対策後もモニタリング箇所の3分の1が基準を超過していたことや、汚染を封じ込めるはずの遮水壁工事の不備と図面の改竄疑惑など、この2年間に新たに噴出した土壌汚染の現実を整理・報告。第3部では元都庁職員の藤原寿和氏(化学物質問題市民研究会)が有害物質による将来的な健康影響について報告した。
「こんなずさんな調査を認めることは全国で真面目に汚染対策を行なっている人や企業に対する裏切りだ。これを認めれば、誰も真面目に対策などしなくなる」(楡井氏)
移転ありきで科学データまで都合良く利用する都の欺瞞。日本中で起こっている文書偽造、データ隠しは、豊洲問題でも起こっていたのだ。
(岩崎眞美子・ライター、2018年6月1日号)