凶器のブロック塀、校長が危険指摘も市教委は「異常なし」
粟野仁雄|2018年7月12日10:15AM
大阪府高槻市立寿栄小学校4年生の三宅璃奈さん(9歳)の命を奪ったブロック塀。プールサイド面からの垂直の鉄筋はあまりにも短かい「手抜き」だったが、横方向の鉄筋は多くて落下してもブロックがバラけず、重くて救出に手間取った。
安倍晋三総理が現場を訪れた6月21日、市役所前の葬儀場で級友たちが号泣して棺を見送った。
保護者説明会後の会見で田中良美校長は「8時からの見回りを少し早くしていれば……」と悔いた。地震発生は6月18日午前7時58分だ。塀の設置年を問うと「わかりません」。
そんなことがあるのか。同校近くの女性は「阪神大震災よりは前やけど40年は経ってない。昔は外からプールが丸見えで女の子が嫌がりフェンスにタオルを突っ込んで目隠しにしとった」と振り返る。田中校長は「3年前に防災アドバイザーから危険を指摘された」と明かした。市教委はいい加減な調査で「異常なし」としていた。
震度6弱で5人が亡くなった。東淀川区上新庄で新庄小学校周辺の見回り中だった安井實さん(80歳)も民家の倒壊ブロック塀の犠牲になった。安井さんを知る女性は「下校時も見回ってくれた。私も子どもたちに『おっちゃんが帰れへんから早く帰りなさい』とってました。なんでこんなことに」と手を合わせた。このブロック塀、残された基礎に鉄筋を通した穴は一つもない。倒れて当然だ。
町の外観はさして異常時を感じさせないが屋内は大変。高槻市の主婦は「屋根にシート被せてもらおうと業者に頼んだが『雨で滑るからあかん』と言われた」。シートは雨漏りする部屋に敷かれ上にバケツが置かれていた。
JR高槻駅近くのマンションに住む西崎理恵さん(60歳)は「家具も置いていない部屋にいたけど、阪神大震災の方が揺れも長くて怖かった。電気も水道も大丈夫でした。ガスは自動停止したけど大阪ガスが元栓を開いて管理員さんがボタン操作して3日目の午後には回復しました」と話す。一方、ガスの解除ボタンを押しただけで十数万円を請求する悪質業者もいた。
全壊も半壊もゼロなのに避難者が多い。理由が2年前の熊本地震。
高槻市立柳川小学校に避難する女性は「熊本地震では避難所から家に戻ったら二度目の揺れでたくさん亡くなったから怖い」と話す。
茨木市は高槻市よりブルーシートが目立つ。24日の日曜日、市役所の罹災証明の受付は長蛇の列。「親が建てた古い家が傷んだ」という男性も2時間待たされた。
近年の地震でも罹災証明の受付窓口が最も混むことはわかっている。阪神・淡路大震災でも被害が少なかった大阪。役人含め浪速っ子は「大地震なんか来んわ」と思っていた。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2018年6月29日号)