米国カジノ王との面談契機か カジノ法案が早期審議入りのワケ
横田一|2018年7月17日4:42PM
日米首脳会談でトランプ大統領の失礼な冗談に反論できずに「忠実な従属的助手」(『ワシントン・ポスト』)と酷評された安倍晋三首相が、終盤国会で与野党が激突する「カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案」でも「米国第一・日本の国益二の次」の“売国的”対応を暴露され、「対米追随の安倍自民党対日本の国富流出阻止の野党」という構図となっている。
6月12日の野党共同記者会見で塩川鉄也衆院議員(共産党)は、トランプ大統領の大口献金者でカジノ王こと「ラスベガス・サンズ」のアデルソン会長らカジノ業者と安倍首相との面談が法案成立の推進力ではないかと指摘(本誌6月22日号参照)。
会見に同席した阿部知子衆院議員(立憲民主党)も塩川氏に賛同、「カジノ事業者が日本の貸金業法を免除されてお金を貸せるのはパチンコでもないこと。日本人の国富はどんどん流出する。『国益とは何か』を隠すのが安倍政権の特徴だ」と指摘した。
安倍首相(政権)のトランプ氏への「従属」ぶりは、6月25日の大門実紀史参院議員(共産党)の追及でさらに浮彫りになった。
大門氏が問題視したのは、賭博禁止の日本で競輪や競馬など公営ギャンブルが認められているのは公益性などの厳密なルール(違法性阻却の8要件)をクリアしているためなのに、今回の法案では民間カジノ業者への解禁となること。しかも、アデルソン会長率いる「ラスベガス・サンズ」の会計報告には、マカオやシンガポールのカジノで大半の利益を叩き出して159億ドル(約1兆8000億円)を株主に配当していたことに加え、その株主の7割が会長自身を含むアデルソン一族であることも記されていた。
そこで大門氏は「利益のほとんどを私企業、一つのファミリーが懐に入れる。どうしてこんなものに『公益性』があるといえるのか」と問い質したが、安倍首相は「運営主体はまだ決まっていないからお答えできない」とはぐらかすに止まった。
【野党は結束できるか】
枝野幸男立憲民主代表も29日の会見で、筆者が「『(カジノ実施法案は)トランプ大統領と関係が深いアデルソン会長のための賭博場解禁』という疑念がある」「トランプ大統領に近い人の意向が(法案に)反映されたようにも見える」と聞くと、こう答えた。
「(カジノ業者との面談が)カジノ解禁を早期に強引に推し進めるきっかけになった可能性は十分にあると認識している。今の仕組みのままではノウハウを持っているのは外国で実績や経験を持つ方々であって、事実上、収益を海外に持っていくことを防ぐ仕組みが入っていない」と批判したのだ。
玉木雄一郎国民民主党共同代表も25日の会見で、「賭博罪の違法性を阻却する8要件」に注目。「公益主体がやっている、利益の多くが公益事業に使われる等々が今回、民間主体がもうけるためにやっている。本当に違法性阻却がされているのか」と問題視した。
同党の大塚耕平共同代表にも会見(14日と28日)で同趣旨の質問をすると、「一国の首相たるもの『他国の利益を自国の利益に優先して守る国はない』という当たり前の指導者としての認識を持って臨んでほしいと言っているが、そういう点についての認識が足りない」「自国の利益を犠牲にして自国におけるさまざまなマイナス面に十分な注意力を払わず、他国の利益ないし利害関係者の利益を優先しようとしているように見えるのは本当に総理としてはいかがなものか」(14日の会見)などと安倍首相の対米追随ぶりを批判、「首相として適格性を欠き、即刻退陣してもらいたい」と強調。また、「カジノ誘致で国際的に突出した公共投資をさらに増やすことにもなる」「統一地方選の争点になり得る」(28日)とも述べた。
働き方改革関連法案の採決などをめぐって立憲民主党と国民民主党の不協和音が聞こえる中、安倍自民党が進める“売国的”カジノ実施法案の成立阻止で野党が結束できるのかが注目される。
(横田一・ジャーナリスト、2018年7月6日号)