【想田和弘・柏木規与子夫妻インタビュー】
吸収合併みたいな夫婦同姓は僕らの結婚観に合わない
宮本有紀|2018年7月17日4:47PM
配偶者ビザ更新の「壁」
――96年に選択的夫婦別姓を含む民法改正案が法制審議会で答申されたので、すぐ法改正されると期待しますよね。
想田 そうです。別姓で登録できないことで、2001年にビザを更新する際に不利益も生じました。当時僕は米国の労働ビザで、柏木は僕の配偶者ビザをとっていました。ビザ更新は一度米国から出て在外公館でスタンプを押してもらわないといけない。その時は柏木だけ日本に帰っていて大阪の米国領事館でスタンプをもらおうとしたんです。そしたら姓が違っているから結婚しているとは認められないと門前払いをくらって日本で結婚してから出直してこいと職員の人に言われたんです。
柏木 申請書類を領事館に送っていたんですが、日本人の男性職員から電話があって「先に日本で結婚してください。あなた日本人でしょ」と説教をされました(笑)。それで想田に連絡したんです。想田は米国の弁護士に相談して、弁護士から国務省にかけあってもらい、この2人は婚姻しているからビザを出すようにと国務省から領事館に指導のメールを送ってもらったんです。それで、結婚証明書も持って領事館に行き、「国務省からメールがいっていると思いますけど」と言ったら、今度は女性の日本人職員に「そんなの筋が通ると思っているの?」ってまた説教されて。
想田 米国の領事館ですよ。僕ら米国の法律に則って婚姻しているのにおかしいでしょう。
柏木 私は次の日の飛行機で帰る予定になっていたので、ここでもらえないとチケットが無効になってしまうと困っていたら、領事館の中に領事直通ダイヤルを見つけたので、念のためにかけてみたんです。領事が出たので、「いま下に来ていて、明日の飛行機で帰る予定だけど、ビザがもらえない。米国で結婚したけど日本では姓が違うと夫婦と認められないと言われて出してもらえなくて、夫がひと月ずっと1人で米国で待っている」って訴えました。そしたら米国人は家族重視だから可哀相だと思ったみたいで「君たちは米国で正式に結婚した夫婦なんだし、早く帰ってあげた方がいいね。下ですぐビザを受け取って」と言ってくれて、やっとビザが出て。でも、私に説教していた日本人職員は「なんで出すの?」という感じで腕を組んで睨んでいましたね。