【想田和弘・柏木規与子夫妻インタビュー】
吸収合併みたいな夫婦同姓は僕らの結婚観に合わない
宮本有紀|2018年7月17日4:47PM
姓と絆はまったく別物
――柏木さんは、ご結婚されるときは別姓でと思っていたんですか。
柏木 そもそも結婚するつもりがなかったのであまり考えたことがなかったんです。一人っ子なので「結婚するなら婿養子」と周りからよく言われ、「規与子ちゃんはいいわね、一生名前が変わらなくて」と言われていましたが、特にこだわりはなくて。でもいざ結婚することになったら、やはり名前は変えたくないと思いました。想田も変えなくていいよねという考え方だったからよかったんですが、変えなきゃだめと言われてたらどうなっていたか。
想田 同姓婚って、企業の合併にたとえたらどちらかに吸収合併されるような印象です。その考え方には僕らの結婚観が合わない。僕らは双方が独立した人格として仲良くやっていこうとしていて、対等でありたい。企業でも、対等合併なら名前を両方残すとか別の名前にするとかしますよね。だから、片方の名前しか残らないという同姓システムがしっくりこないんです。お互いに愛着のある名前を保ったままパートナーとしてやっていきたいということで別姓を選択したわけです。どちらかに名前を統一したい人はそうすればいい。でも自分たちはしっくりこないから選択する自由を認めてほしい、ということ。
――選択制だから誰も不利益を蒙らないんですが、強い抵抗が一部あり選択的夫婦別姓制度は実現していません。
想田 実は誰も困らないのにね。同性婚と同じで、当事者がしたいと言ってるのに、同性同士が結婚するのはおかしいって周囲が言うのは、さしでがましいというか大きなお世話。同姓強制もそれと似たものを感じます。別姓にすると絆がなくなるとか家庭が崩壊するとか言う人がいるけど崩壊しねえよって(笑)。そんなこと言ったら日本以外の国は全部家庭が崩壊していることになる。むしろ、僕らがどちらかの姓に統一したら関係がぎくしゃくしますよ。だって関係が変わっちゃうもん。
――どちらかの家のもの、みたいな感覚になりますよね。
想田 なっちゃいますよね。それに女の人が変えるのが前提という暗黙のプレッシャーに与したくないということもある。それに男性が姓を変えると「婿養子」と言われて否定的なニュアンスがある。
柏木 「あの人は婿養子だから立場が弱い」とか言われるしね。
想田 そう。逆に言うと、姓を変えた女の人はそういう地位におかれているということなんですよね。それもおかしな話です。
柏木 領事館の人も私が姓を変えるのが前提で、男性が変えるという発言は一言もなかったですね。
想田 いま何割くらいの女性が姓を変えているんですか。
――約96%です。
想田 そんなに? それはおかしいですよ。男女で50%ずつくらいにならないと。
――お2人の法律婚の登録ができたら、海外で別姓で法律婚して日本で登録するやり方ができますから注目の訴訟です。国はあわてているのでは。
柏木 あわててください(笑)。
想田 あははは。別姓制度導入は世論があとおしすればそろそろ実現すると思うんです。で、僕の感覚だと別姓を認めようという人は増えている気がします。
――今年2月に内閣府が発表した世論調査でも別姓賛成は増えていて、全体で42・5%。20~30代の賛成は5割以上で、40~50代も5割近いです。20〜50代で反対は10%台。反対が賛成より多いのは70代以上のみです。
想田 そうですよね。だって実際に、法律婚をしたいけど別姓では認められないから事実婚という方もたくさんいると思います。そういう方たちは本来なら認められるべき法的優遇措置が認められていないわけで、それは法の不備です。