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日テレのために規制緩和か
千代田区がビル制限150メートルへ

伊田浩之|2018年7月19日12:27PM

千代田区二番町にある日本テレビ放送網の敷地に高さ150メートルの高層建築が建ったらどう見えるかのシミュレーション。住民が作成して勉強会で紹介した。(撮影/伊田浩之)

東京都千代田区(石川雅己区長)が番町・麹町地域の地区計画を変更し、建物の高さ制限を一部で現行の60メートルから150メートルにする構想がある。六つの町会と日本テレビ通り振興会でつくる民間の「日本テレビ通りまちづくり委員会」が今年1月、再開発のためのルールとして発案。3月に千代田区が設置した「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」(前出の委員会に日本テレビ放送網や学校法人などが追加参加)が検討を進めている。

千代田区は「地域のみなさまのご意見を聞いて進める。緩和は決定していない」とするが、住民からは「日テレのための緩和」「寝耳に水」「文教地区で子どもが多い。巨大施設ができると治安が悪化する」と不安の声が出ている。

ある民放関係者はこう話す。

「日本テレビ放送網は日本のテレビ放送事業の草分けです。読売新聞社社主だった故正力松太郎が強力に推進。1952年にテレビ局予備免許第1号を獲得し、翌53年、千代田区二番町で開局しました。デジタル放送対応で2004年、東新橋(汐留)の日本テレビタワーに移転しましたが、二番町にはスタジオや制作機能が残っています。赤坂サカスの開発によって東京放送ホールディングス(TBSHD)が不動産収入を得ているように、本社が戻るかどうかは不明ですが、日テレさんも二番町再開発で儲けたいのでしょうね」

【「高層化という病」】

計画に疑問を持つ住民たちは「番町の町並みを守る会」を結成。6月16日に千代田区麹町区民館で開かれた第1回勉強会で、日テレがある場所に高さ150メートルのビルができたらどう見えるかというシミュレーション(床面積は仮)が投影された。

勉強会では、日本テレビ放送網麹町再開発事務局(現・番町再開発事務局)が配付した資料も配られた。「新たな高さ制限/最大150mまで」と建物のイラスト入りで明記され、(1)カフェ等を誘致して日テレ通りを中心に賑わいを創出、(2)盆踊りなどの地域イベントが開けるひろばの設置、(3)住宅地との間に緑地帯を設ける──などをイメージしている。

千葉大学名誉教授の福川裕一・全国町並み保存連盟理事長は前出の勉強会で次のように批判した。

「高層建築のためには敷地内に空き地を作る(道路から後ろにずれる)必要があるのですが、これは『高層化とオープンスペースという病』だと考えています。都市空間の快適さを決めるのは、実は道の幅と建物の高さの割合です。ローマ時代から続く考え方で、フランスの都市計画などにも引き継がれています。要するに、高層化では快適な町並みにはなりません」

一方、同まちづくり協議会では、7月に基本構想パブリックコメント案を確認して、パブリックコメントを住民から募集。今年の第3四半期(10~12月)前半には基本構想を策定することとなっている。地域住民の声を聞くことは聞くが、「粛々と規制緩和に向けて動いている」ようにみえる。

日本テレビ放送網は「日本テレビ通り沿道は、これまでも地域が率先して町づくりを検討しております。日本テレビもこれに参画して番町をよりよい街とするように検討を重ねてまいります。所有地に関しましても、地域のみなさんにご意見を伺いながら進める予定です」とするにとどまり、高層開発計画の有無は答えなかった。

(伊田浩之・編集部、2018年7月6日号)

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