李政美さん
小室等|2018年7月22日8:00AM
歌を通して日本と韓国・朝鮮の平和問題を考えたいという、練馬区議・池尻成二さんからの提案を受け、彼が代表をしている「市民の声ねりま」主催で「小室等&李政美 平和のためのライブ2018」が企画されている(七月九日一八時半~、東京・大泉学園ゆめりあホール)。副題は「心とかす歌を、岩をくだく音を。日本海(東海)を平和の海に。」。
池尻さんとは、彼が二〇〇三年に初当選する前からの付き合い。その池尻さんが、僕が在日コリアン二世のシンガーソングライター、李政美さんと懇意なことを知り、企画を持ちかけてきたのだ。
さて引き受けたのはいいけれど、いざとなるとこの問題、ほんと難しい。僕の認識不足は甚大だし、ほんと恥ずかしい。
コリアひとつ取っても、由来は高麗らしいですね。今は日本全国にコリアンタウンがある。言葉の元を辿れば高麗街か、なんて言ったら短絡だよね。
朝鮮ではなくて韓国と呼ばなきゃいけないようになったのはいつごろからだったろう。正式には、大韓民国。朝鮮という言葉を使うのが憚られる空気になったのは?
朝鮮というと、イコール北朝鮮と思う人も? 北朝鮮の正式名は、朝鮮民主主義人民共和国。南北、英語での略呼称はサウスコリアとノースコリアかな? 世界卓球選手権団体女子の南北合同チームの名称はコリアだったね。
そもそも、南北は互いにそれぞれを国と認めず、実効支配の下、互いに朝鮮半島全体が自国と言い張って、今に至るんだよね。
李政美さんとはじめて会ったのは、一九八七年、韓国の反体制シンガーソングライター金敏基の作品を歌う企画に、ギター要員として呼ばれたときだった。彼女の歌は素晴らしく、以後、ことあるごとに引っ張り出させてもらっているが、あらためてみると、僕は政美さんの何を知っているのか。
「政美」の発音は、本当はちょんみだけど、姓名続けて発音のときはリエゾンしてちがぢになる。身近な者たちは、ちょんみと濁点なしで呼び合っている、くらいのことは知っているけど……。
ずいぶん前の話になるが、「小室さんが私によくしてくれるのは私が朝鮮人だから?」と政美さんから問われた。朝鮮人ということはともかく、彼女が在日という立場を背負っている部分は、今の時代のなかでまったく意識しないというわけにもいかない。
話を戻すが、副題の「日本海」「東海」も、列記することで公平が保てるわけでもない。ともあれ、無知を知り、その上で互いに互いを知ろうとすることだよね。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年6月29日号)