名古屋高裁が下した「原発裁判史上、最悪の判決」とは
伊田浩之|2018年7月27日11:34AM
名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は7月4日、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、原告住民側の請求を棄却する判決を言い渡した。電力会社側の主張を丸飲みし、安全設計が完全に崩壊する致命的状況に至る可能性があるとしても具体的危険はない、という矛盾した判決に、住民側からは「日本の原発裁判史上、最悪の判決」と批判が出ている。
法廷で「あなたの判決は間違ってます」と手を挙げて発言した原告の水戸喜世子さんは「普通なら廷吏が飛んできて制止するのに誰1人こない。傍聴席のあちこちからも声があがりはじめたがそれも無視。内藤裁判長は、1秒でも早く読み終わって退席したい雰囲気がありありでした」と話している。
金沢の司法関係者は、住民敗訴は予想していたが、ここまでひどい判決は予想外と次のように憤る。「控訴時の市川正巳裁判長は、1回目の進行協議で5回目までの審理期日を決めるなど積極的。関西電力に厳しく立証計画を求めていました。なのに口頭弁論を開く前に異動、内藤裁判長が赴任してきたのです。内藤さんは、当時最高裁事務総長だった戸倉三郎さん(現最高裁判事)と司法修習の同期。最高裁に送り込まれたと噂になりました。証拠調べに凄く消極的で、判決を急いでいましたね」
別の司法関係者は「他の裁判でも内藤さんの判決は説得力がない。勝っても負けても納得できないのです。ある会合で『原発裁判さえなければ金沢は本当にいいところなんだけどね』と口を滑らせたそうです」とあきれる。
判決後の記者会見で島田広弁護団長は「最高裁裁判官が実質的に首相によって選ばれることになってしまった。政権に忖度するのなら裁判所はいらない」と語る。
東電福島第一原発事故が“風化”するのにしたがって、司法の役割を放棄する判決が増えている。司法を正常化させるためには安倍政権に退場いただくしかない。
(伊田浩之・編集部、2018年7月13日号)