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県知事選で「オール沖縄」打倒目指す自民党の強気

大野亨恭|2018年8月2日12:20PM

県議会代表質問で答弁する翁長雄志知事(左)=6月26日午後。県議会。知事選に関して記者団の質問に答える佐喜真淳宜野湾市長(右)=7月3午前、宜野湾市役所。(提供/大野亨恭)

県内最大の政治決戦、沖縄県知事選挙が11月18日に実施される。名護市辺野古の新基地建設阻止を訴え、翁長雄志知事が自民党系の現職を10万票の大差で破ってから4年。沖縄の民意を一顧だにせず政府が新基地建設を強行する中、辺野古の是非や沖縄振興策を争点に、翁長氏を推す「オール沖縄」と、県政奪還を目指す政府、自民党との全面対決になる。ただ、翁長氏は膵臓がんの切除手術を受け、現在も抗がん剤治療を続けており、出馬できるかは不透明だ。

一方、自民は、普天間飛行場を抱える宜野湾市の佐喜真淳市長(53歳)の擁立を決め、公明、維新との協力による「勝利の方程式」でオール沖縄の打倒に挑む。

自民党沖縄県連や経済界などでつくる選考委員会は、宜野湾市議や県議、市長と積み上げてきた政治キャリアや高い知名度を評価し佐喜真氏を候補者に決定した。佐喜真氏は、後継市長の人選など「環境整備」にも着手しており、立候補は確実視されている。

前回、大敗した自民だが、今回の知事選には自信を見せている。自信を裏打ちするのが、今年2月にあった名護市長選だ。前評判を覆し、新人で自民などが推す渡具知武豊氏が新基地建設に反対する現職を破った。辺野古新基地建設問題への是非を明確にせず、争点化を避けたことが奏功した。

自民は知事選でも辺野古問題の争点化は避ける構えだ。政府は8月にも辺野古の海に土砂を投入し本格的な埋め立てに着手する方針で「辺野古問題は終わった話」(県連幹部)と位置づけ、米軍基地の跡地利用や沖縄振興策など「未来の話」(同)を前面に戦う。

【保守分裂回避図る】

ただ、自民にも懸念材料がある。保守系候補として知事選へ出馬意向を示している、安里繁信氏(48歳)の存在だ。安里氏は県内で物流や広告代理店などを展開するシンバホールディングスの会長で、日本青年会議所(JC)会頭や沖縄観光コンベンションビューロー会長などを歴任した。安里氏は選考委員会の人選過程が不透明として決定に強い不満を持っており、7月6日には那覇市内に早々と事務所を開いた。仮に安里氏が出馬を強行すれば保守分裂となり、いくらかの保守票を割ることになる。

だが、自民県連は「佐喜真氏で一本化を図れる」と強気だ。県連幹部は「自民の業界での影響力は経営者としてよく分かっているはずだ。自民とたもとを分かって出馬する決断はしない」と読む。安里氏側近も「選挙資金も人手も政府、与党の支援なしではとてもまかなえない」と実情をこぼす。安里氏を支援する企業は「上げた拳のおろし方」を自民に近い財界人に相談しており、佐喜真氏の正式表明を境に、一本化に向けた動きも始まりそうだ。

一方、オール沖縄側は、現職の翁長氏再選を目指し、態勢づくりを急いでいる。翁長氏は6月の県議会で出馬意思を問われたものの「しっかりと治療し、県民の負託に応えたい」と明言を避けた。療養中のため公務は週1、2回程度に制限しており、県政与党県議からは「仮に立候補しても向こう4年間、知事職を全うできるかとの不安はある」との懸念も漏れる。

ただ、県政与党や翁長氏を支える労働団体などの間で翁長氏の後継を模索する動きはない。オール沖縄の象徴でもある保守中道系の議員や企業は「翁長氏の代わりは翁長氏」(企業幹部)との姿勢で、仮に翁長氏が出馬できなければ、オール沖縄の一員としては知事選に望まない構えだ。さらに、辺野古の埋め立てが進めば、名護市長選で際だった「あきらめムード」が有権者に広がる可能性も。埋め立て承認の「撤回」時期、翁長氏の出馬意向の行方に注目が集まる。

(大野亨恭・『沖縄タイムス』政経部記者、2018年7月20日号)

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