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遅すぎた避難指示 倉敷・真備町「水没」の爪痕
冨田きよむ|2018年8月4日10:48AM
一つの町が丸ごとみ込まれるような現場は初めてだ。取材したのは7月9日。発生から4日近くたつのに水は完全には引いていなかった。岡山県倉敷市真備町で被災した建物は65%とも70%ともいわれているが被害の全貌は死者を含めてまだ確定していない(7月13日現在)。
小田川にかかる二万橋は消防車と救急車の待機場所。時折そちらの方向からサイレンの音が響き、市街地中心部に走っていく。「ああ、また見つかったんだ」と、自宅の後片付けをしながらおばあちゃんがいった。「最初はまた1人助かったんだと思ってサイレンを聞いたけれど、今ではサイレンの音は亡くなった人が見つかった合図になった」と、肩を落とした。
倉敷市の真備地区に避難指示が出たのは7日の23時15分。「逃げろったってその時は家の前の道は激流だったし、真っ暗だし、そんなときに避難するのは死にに行くようなもんだ」と、初老の男性は2階に上がって難を逃れた。避難勧告が出たのも22時00分だった。遅すぎる発令だった。下二万に住むIさんは、「夕方7時頃どんどん水が上がってきた。近くの排水ポンプ場も故障したので、現金と貯金通帳とキャッシュカードをもって友人宅に避難しました」という。
避難勧告も避難指示も遅すぎたのだ。失われずにすんだ命が失われた。
(冨田きよむ・フォトジャーナリスト、2018年7月20日号)
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