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「ニュース女子」東京MXが辛淑玉さんに謝罪も「DHCテレビ」は開き直る
岩本太郎|2018年8月10日12:33PM
MXの苦難の歴史
おそらく多くの放送業界関係者が「ニュース女子」問題をめぐる経過を見ながら抱いている感想を一言でいうなら「確かにMXは悪いけど、ことさらMXだけを責めてもなあ……」というあたりではあるまいか。
前述の通り「ニュース女子」はDHCテレビと制作会社「ボーイズ」が共同で制作のうえ、これまでにMXのほか各地の民放テレビ約30局(他にBSやDHCシアター独自のネット配信など)で放送してきた、いわば「持ち込み番組」だ。こうした形態は放送業界では通販番組などで昔からおなじみのものである。無論、免許事業者として自らが日々の放送に使っている公共の電波でそれをオンエアしたからには局側の放送責任も問われるし、だから今回もBPO(放送倫理・番組向上機構)において問題視されたわけだが、えてして通販番組に発生するトラブルをめぐり放送局と通販業者との間で責任の所在が曖昧にされてしまいがちなケースと、ある意味で同根の問題がそこにはある。
では、今回の「ニュース女子」のような問題が他の日本テレビやフジテレビのような大手キー局でも起こりえたかといえば、おそらくそれはなかっただろう。「ニュース女子」はMXでは月曜22時台のプライム枠の放送だったが、さすがにキー局はそんなメインの時間帯で危なそうな持ち込み番組を編成しなければならないほど経営的に追い込まれているわけではない。他方、地方局ではゴールデンやプライム枠はキー局発のネット番組が入るし、実際「ニュース女子」もMX以外の地方局では、いずれも営業的に苦労している深夜帯での放送ばかりだ。
ならばなぜMXはそんな番組をプライムで放送したのか。その理由は同局が23年前の開局以来歩んできた苦難の歴史に求めることができる。
東京・麴町のMX本社前で番組放送後から抗議活動を続けてきた方々の間からは「昔のMXは労働運動やホームレス支援活動なども積極的に報じてくれたのに」と惜しむ声が聞かれたものだが、実際1995年11月に開局した当初のMXは24時間ニュース専門局をコンセプトに掲げ、小型カメラを携えたビデオジャーナリストが、都内の各地で日々起こる話題を機動力を生かして取材・報道するという極めて先進性に富んだテレビ局だった。しかし経営陣のゴタゴタ、問題のある営業担当者による悪行などから営業的には当初から大苦戦。優秀なジャーナリスト志向の記者たちが辞めていく中、一時は主要なスポンサーはもちろん自前での番組制作力もないような苦境へと陥ってしまったのだ。