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「ニュース女子」東京MXが辛淑玉さんに謝罪も「DHCテレビ」は開き直る
岩本太郎|2018年8月10日12:33PM
巨大企業DHC
それを救ったのが外部からの持ち込み番組であり、その一つが化粧品大手DHC(吉田嘉明会長)だったというわけだ。このMXとDHCとの蜜月は以後もますます拡大し、2000年頃には単なる「局─スポンサー」の関係を超え、MXがDHCの「代理店」、つまり他の放送局にDHCが広告を出す場合にはMXが仲介するような関係に発展。15年にMXで放送が始まった「ニュース女子」は前述の通り翌年にプライム枠へと昇格したが、例の沖縄基地問題特集が放送される前の15~16年の2年間ではMXの年間売上高にDHCが占める比率が15~20%程度に及んでいた(過去の売り上げ比率はもっと高かったとの内部証言もある)。加えて、前述の通り報道系の意思ある社員はほぼいなくなってしまったため、そうして持ち込まれる番組を特に疑問も持たないまま放送し、「何でこんな大きな問題になったかを理解できている現役の社員はほとんどいないのでは」(あるOBの証言)というのが今のMXの内情であるらしい。
一方のDHCからすれば、東京をエリアとする後発の地上波民放局の苦境に上手く付け入る形で自社ブランドの告知を図れたメリットは大きかったことだろう。「ニュース女子」プライム進出時の記者会見でDHCシアター(当時)の濱田麻記子社長は裏番組となるテレビ朝日「報道ステーション」を「潰しに行きます」とブチ上げたものだ。それが去る3月には騒動の末にMXでは放送終了となったものの、他の地方局やネットでは以前と何ら変わることなく放送中。むしろMXでの放送に投じていた金が浮いたわけで、DHCとしては何も損はしていない。逆に少し前まで無名だった番組の知名度が一連の騒動で一気に上がったことで「元はとれた」と今頃ほくそ笑んでいるかもしれない。
前記の濱田氏の発言にも表れているように、DHCは「放送」に対しては並々ならぬ関心を持っている会社でもある。16年には経営難に陥っていた福岡県の民放FM局「クロスFM」を買収し、1年で増収増益に転じさせてしまった。ちなみにクロスFMはコミュニティ局ではなく、首都圏でいえば「FMヨコハマ」「NACK5」などと同じ県域FM局。つまりそれだけの規模の局を買収できるほどの体力を、化粧品などの販売収入をバックに有している企業、それがDHCなのだ。
「第二幕」に入ってようやく裁判等で直接対峙することになった真の敵は、そんな巨大な存在だ。もとより、これまでの経過を見てもネットを使った情報発信面でも手練れのところを見せているし、首都圏に限らず各地の駅や百貨店に青い看板のDHCの店が数多存在するのはみなさんもご存知の通りだ。待ち受けているのは決して容易な戦いではない。
(岩本太郎・ライター。2018年7月27日号)