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オウム死刑執行に麻原氏の元主任弁護人らが抗議 
「100年前に逆戻り」

小石勝朗|2018年8月17日10:42AM

抗議集会には約300人が参加し、死刑の廃止を求めた。(撮影/小石勝朗)

オウム真理教の教団元幹部13人への「死刑執行に抗議する集会」が7月27日、東京都内で開かれた。戦後例を見ない大量執行であるだけでなく、10人は再審請求中(うち6人は1回目)で、憲法が保障する裁判を受ける権利を侵すとの批判が強い。政府の強硬姿勢に「死刑判決が確定しさえすれば執行できるという新たな段階に踏み込んだ」と非難が渦巻いた。

「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」など4団体が主催し、約300人が会場を埋めた。採択した抗議声明は「オウム関係者が引き起こした事件に強く反対する」とした上で、「殺戮の繰り返しや命を奪うことによっては、何一つ問題は解決しない」と強調し、死刑の廃止を求めた。

【司法権の侵害だ】

集会では、執行された元幹部の弁護人が相次いで登壇。松本智津夫(麻原彰晃)さん(執行時63歳)の主任弁護人だった安田好弘弁護士は「麻原氏の執行を止めれば他の死刑囚の執行も止まる」と考え、さまざまな法的手段に取り組んだ。第4次再審請求のほか、人身保護請求、恩赦出願などを相次ぎ起こす中で執行され、「司法権の侵害だ」と語気を強めた。

刑事訴訟法は、死刑判決の確定から6カ月以内に執行命令を出すよう義務づける一方で、再審請求の手続きが終了するまでの期間はこれに算入しないと定める。ただ、今回執行された多くの元幹部のように確定から6カ月を過ぎて再審請求した場合の規定はなく、安田弁護士は「政府が『執行できる』と勝手に解釈したのは、憲法の法定手続きの保障に反し許されない」と反論した。

井上嘉浩さん(執行時48歳)は13人の中で唯一、一審判決が無期懲役だった。公証役場事務長に対する逮捕監禁致死罪について今年3月に東京高裁へ再審請求し、弁護人と裁判所、検察との3者協議が2回行なわれていた。伊達俊二弁護士によると、執行3日前の7月3日の協議で、新証拠になるとみられる携帯電話の発信記録の開示を検察が約束し、次回協議が8月6日に決まっていた。伊達弁護士は「冤罪で死刑執行されたと思う」と無念さをにじませた。

小池泰男さん(旧姓・林、執行時60歳)は、弁護人との面会に拘置所職員が立ち会うことが「秘密交通権」を侵害するとして、差し止めを求める行政訴訟を起こし係争中だった。1年半前に仮差止が認められたが、その後も拘置所は対応を改めなかったという。

吉田秀康弁護士は「1回目の再審請求も高裁で審理中で、判断を受けられないまま執行された。憤りでいっぱいだ」と語った。

端本悟さん(執行時51歳)は再審請求をしていなかったが、もとの裁判の最高裁の審理の段階で、「事件当時はマインドコントロールされており、指示に逆らえる状態ではなかった」との専門家の鑑定書を得ていたという。

河井匡秀弁護士によると、オウム関連の裁判が一段落した時点でこの鑑定をもとに再審請求するよう説得したが、「許されないことをしたのに申し訳ない」と承諾しなかった。執行直前の面会でも下を向いて「できません」と繰り返したという。河井弁護士は「このような結果になり残念で、無力感を抱いている」と話した。

安田弁護士は1910(明治43)年の「大逆事件」にも触れ、翌年に死刑が執行されたのは幸徳秋水ら12人だったと指摘した。それを上回る今回の大量執行に「死刑の状況は100年以上前に戻った」と危機感をあらわにした。

6月には死刑が確定した「袴田事件」で、静岡地裁が認めた再審開始を東京高裁が取り消しており、行政だけでなく司法も死刑の維持に躍起になっている。

執行された13人のうち6人と面会したという映画監督の森達也さんは、こんな思いを明かした。

「死刑制度が是か非か議論をしたい。必要な情報も出さないまま、そこから目を背けて執行が行なわれている現状は絶対におかしい」

(小石勝朗・ジャーナリスト、2018年8月3日号)

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