3選しても安倍政権が
はかない理由
佐藤甲一|2018年8月23日7:52PM
阻止できる者はいるか
だが、はたして安倍3選を誰が阻止しうるのかというと、いささか心許ない。反安倍を鮮明にしているのは石破茂元幹事長だが、党内の広がりはない。石破氏を支持する幹部議員の中には「お付き合いも今回限り。総裁選挙が終われば、代替わりした竹下派に移りたい」という声がささやかれている。一方、名指しされた竹下亘総務会長は安倍支持一辺倒だった額賀福志郎元財務大臣の方針を白紙に戻し、総裁選挙の対応はまだ明らかにしていない。竹下氏の悲願は故小渕恵三首相の愛娘、小渕優子元経済産業相を初の女性宰相に育て上げることだ。そのためには今誰に恩を売ればいいのか、という計算がある。その竹下氏を密かに「政治の師」と思う小泉進次郎筆頭副幹事長の動向も、党内若手に及ぼす影響は少なくない。
宰相の資質に欠け、看板の選挙は敵失で勝ち続けたにすぎず、頼みの外交も虚構にすぎない安倍首相だが、これもまたポスト安倍の議員たちの迫力と努力不足に助けられ3選となるのかどうか。
だが、たとえ安倍首相が3選を果たしたとしても、それははかない勝利である。なぜならその瞬間から「安倍おろし」が始まるからだ。国民の信頼を失っている安倍首相を引きずり下ろした一番手の人物こそが、次期宰相の切符を手にすることにほかならない。安倍政権の終わりは遠からずやってくる。
(さとう こういち・ジャーナリスト。2018年7月20日号)