障がい者の仲間たちへ
小室等|2018年9月4日10:00AM
七月一九日、NPО法人ゆめ風基金のイベントがカタログハウスの学校共催で開かれた。「第13回 ゆめ風であいましょうin東京 抵抗の言葉 取り戻す~70年の戦後づくり=平和づくりを受け継いで~」(牛込箪笥区民ホール)。
出演は常連の李政美、オオタスセリ、こむろゆい、小室等に加え、今回はメイン・スピーカーに詩人のアーサー・ビナード氏。楽屋ではさっそく、日本語の専門家であるビナード氏の日本語話。
「広島土砂災害のあった八木地区の昔の地名は八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)、蛇が降るような水害が多かったということは昔の地名には示されているのに。つまり人が住んでいいところじゃないんだよね」
八木蛇落地悪谷が八木上楽地芦谷に改名され、現在八木だけが残ったということらしい。これ、行政と不動産屋の結託? 東京と広島に住むビナード氏は続ける。
「広島市内の地名もどんどん変えられていってる。これは記憶のリセット、地名が記憶している原爆の記憶のリセット、つまり削除」
地名は歴史の記憶装置だ。イベントのあった牛込箪笥町も、町名に歴史が記録されている。そういえば東京の地名、近年平気で変えられていっている。変えられたことで、その地名が記憶している、たとえば関東大震災での朝鮮人虐殺の記憶も削除、きれいごとへのリセットが行なわれていたんだと、ビナード氏に教えられた。
ゆめ風基金の報告もしておこう。今回のイベントで配られたニュースレター「ゆめごよみ風だより」臨時号から、ゆめ風基金代表の牧口一二氏の呼びかけを抜粋。
〈こうした状況下で、逃げるのがもっとも苦手な障害者の仲間たちはどうしているだろう。
誰にも知られないまま懸命に助けが届くのを待っている障害者が一人も居ないことを願う。
ゆめ風基金はこんな時のために普段から多くの人に呼びかけてお金を集めています。
つまり、この基金は大勢の人が「障害者の役に立つなら」と寄せてくれた障害者のお金。
だから何の遠慮も要りません。今度の災害で「ここを助けてほしい」と名乗り出てください。
何かの都合で障害者のグループに参加していない人も行政発行の手帳を持ってない人も連絡してみてください。ケースによっては相談に応じられます。
とにかく一人ぼっちにならないで、なんとか誰かに合図を送り、実情を伝えてください。
全国の障害者のお金を預かっている……認定NPOゆめ風基金です。ご連絡を待ってます。(2018年7月10日)〉
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2018年7月27日号)