再春館にも賞金「中抜き」疑惑浮上 元監督不正行為と同様か
週刊金曜日オンライン取材班|2018年9月10日2:44PM
今井氏の不正行為と同じ時期に再春館製薬所も
ところがここへきて再春館製薬所にも金銭疑惑が発覚した。関係者によると、今井氏の不正行為があったとされる2015年と同じ時期、再春館製薬所もまた選手に渡すべき賞金を熊本県バドミントン協会から会社指定口座で受け取り、ピンハネしていたというのだ。
選手に入る賞金のほとんどは世界バドミントン連盟(BWF)のツアーの賞金である。賞金は前年1年度分をまとめてBWF→日本バドミントン協会→各都道府県バドミントン協会へと渡り、最後に各都道府県バドミントン協会から選手に支払われる流れが一般的だ。各県バドミントン協会から選手に渡される際の支払い方法に決まったルールは存在しない。各選手の口座に直接支払うやり方もあれば所属する企業の監督の口座を通じて支払いがなされる場合もある。
ポイントは、選手に賞金が入るのが「1年遅れ」になるという点だ。再春館製薬所のケースを見てみる。
再春館製薬所バドミントン部は、前身のルネサンスエレクロニクスやNEC九州のチームの時代から今井氏が監督として強豪チームに育て上げてきた。ルネサスの経営悪化によりチームは2015年、再春館製薬所にチームごと移籍。つまり2015年に熊本県バドミントン協会から再春館製薬所に入った賞金は、前年2014年のルネサス時代に選手が獲得したものなのだ。ルネサスは選手の賞金にはノータッチだった。
「ルネサス時代の賞金」を再春館製薬所はどのように選手に配ったのか。
再春館製薬所バドミントン部関係者によると、2015年の夏頃、熊本県バドミントン協会は再春館製薬所に対し2014年分の賞金を振り込んでいる。振込先口座は再春館製薬所が熊本バトミントン協会に指示した口座だった。熊本県バドミントン協会は選手の了解を得ずに再春館製薬所の口座に振り込んだという。
同年12月、再春館製薬所の西川正明社長は選手らやスタッフを集め、直々に賞与を手渡した。その際、前年の獲得賞金のあった選手には賞与とは別にもう一つ賞金の袋が手渡された。
「ルネサス時代の賞金」である。ところが、入っていたのは賞金受け取り全額ではなく、「中抜き」された残りの金額であった。
たしかにチームが再春館製薬所に移行した直後、選手たちには「賞金の2割を差し引く」という会社方針が決定事項として説明されている。しかしそれは文言にはなくとも「再春館製薬所の選手として勝ち取った賞金」について、という前提がつくのではないか。
スポーツ法務に詳しい弁護士は本誌の取材にこう解説する。
「実業団選手の場合、会社のサポートあっての選手活動であり賞金獲得でもある。だから選手の真摯な同意があれば賞金の一部を会社に分配するという処理が許される場合もあるでしょう。しかし、移籍前の会社に賞金分配の取り決めが無く、移籍前の会社の従業員としての選手活動で獲得した賞金について、これと無関係な移籍後の会社が分配を受けるのはそれ自体不合理で違法と思われます」
一度は「賞金の2割は差し引く」と選手に通知した再春館製薬所だが、2016年秋に今井氏と選手らとの間に金銭トラブルが表面化すると、賞金「中抜き」も止めている。これでは今井氏を追求するために、自分たちの所業もなしにしたと受け取られても仕方がないのではないか。