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沖縄知事選、玉城デニー氏擁立の背景に幅広い民意

渡瀬夏彦|2018年9月12日6:09PM

翁長知事、承認撤回へ

8月11日、雨の県民大会。最後の「頑張ろう三唱」の際、高里鈴代オール沖縄会議共同代表(前列中央)の両脇を固める玉城デニー衆議院議員(前列左から2人目)と謝花喜一郎副知事。翁長知事の帽子も「参加」していた。

そこまで遡って話をするのはなぜか。

それは、知事選候補者選考の最終段階において、翁長知事の肉声のメッセージの存在が明らかになり、病床で玉城デニー氏と呉屋守將氏への期待の大きさを語っていたことが伝えられ、その「遺言」のような一言で候補者が決まってしまってよいのか、これではとても民主的な手続きとは言えないのではないか、という不満が、いわゆる「オール沖縄」陣営の内部からも噴き出したからである。

わたしが咄嗟(とっさ)に胸のうちで叫んだのは、「あなたたちは、そんなに負けたいのか。そんなに安倍官邸に知事の椅子を差し出したいのか」という言葉だった。

慰霊の日の平和宣言からおよそ1カ月後にも、翁長知事は公の場で、辺野古新基地建設をゴリ押しする政府に真っ向対峙する姿勢を示した。

7月27日、「辺野古埋め立て承認」の撤回の意思をついに明確に表明したのである。

このときの気力の振り絞り方は、6月の慰霊の日よりも、凄まじいものがあった。体力の減退は著しく、歩くのもやっと、という姿で記者会見場に現れ、まさに「気」の力だけで記者との質疑応答をこなしたように見えた。

記者会見の最後、大手全国紙の記者が、「承認撤回は移設阻止の最後のカードと言われている。知事はあらゆる手法を駆使して造らせないという公約を今後、どのように実現していくのか」と問うた時、翁長知事は、笑みさえ浮かべてその記者を一瞥し、「そもそも論」で切り返した。

「(略)今の日本のアメリカに対しての従属は、日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある。この二つの状況の中で日本はアメリカに対して何も言えない状況がある」

理不尽な暴挙に出ている政府を批判せず、県知事の「阻止の手法」ばかりを問うマスメディアに対する痛烈な批判でもあった。表情は、誇りに満ち、美しかった。

これが、翁長知事が公の場に姿を現した最後だ。会見の3日後の30日に緊急入院し、入院9日後の8月8日に、この世を去った。

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