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沖縄知事選、玉城デニー氏擁立の背景に幅広い民意

渡瀬夏彦|2018年9月12日6:09PM

「負け戦」に危機感

8月22日。県議補選に出馬予定の山内末子前県議の事務所開き。糸数慶子参議院議員(右から2人目)、大城紀夫連合沖縄会長(右)とお茶で乾杯する玉城デニー氏(左から2人目)。このころには、ほぼ出馬のハラは決まっており、この日の弁士たちからは「全力でデニー知事を誕生させる」というスピーチが相次いだ。

その夕刻、沖縄市民会館中ホールでは、「上原康助さんを偲ぶ会」が開かれていた。1年前に亡くなった元全沖縄軍労働組合委員長で衆議院議員を務めた上原氏との交流を懐かしむ多くの政治家、労働組合関係者らが集い、氏の功績を称えていた。なんとその場に、翁長知事の訃報が飛び込んできた。

司会を務めていた山内末子前県議会議員は、その場で泣き崩れ、やがて毅然と立ち上がり、最後まで会の進行役の務めを果たした。今だからこそ、あの日のことを正直に書こう。

じつはこの会場で、わたしは玉城デニー氏に歩み寄り、面と向かってこう水を向けたのだ。「こんな大変なときに、このような場で恐縮ですが、知事になる気持ちはありませんか」。本人の反応は、当然というべきか固辞に近いものだったが、しかし「可能性はゼロではない」というのが、わたしが得た実感だった。

それからというもの、玉城氏の身近にいる人や、あるいは玉城氏を知事候補に推したいと願う人々とも連絡を密に取ることにした。翁長知事の通夜の場では、「オール沖縄」陣営の重要人物たちと次々にコミュニケーションをとった。翁長知事のもの言いたげな寝顔を見て、涙に濡れてばかりはいられぬ、という強い思いが湧いてきた。

8月11日、知事も出席を予定していた「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会」の場でも、玉城氏本人と立ち話をした。本人の固辞する姿勢は続いた。しかしわたしは、玉城氏とのコミュニケーションを深める中で、逆に信頼感を強く抱いた。

「オレがオレがという野心むき出しの態度を取ることは決してないが、状況を冷静に把握しようとする姿勢を徹底して貫いている。だから、玉城氏を支える周囲の環境さえ整えば、ハラを決めてみんなの思いを受け止めてくれる可能性がある」

この超短期決戦を突破する力のある人は、自ずと限られる。

(1)知名度が抜群である人

(2)演説力に秀でている人

(3)性格の明るさを含め、若年層含む一般大衆を惹きつける魅力を持っている人

(4)保守・中道・革新・無党派を問わず幅広い支持を得られる立ち位置とウイングの広さを持っている人

選挙の素人のわたしにさえ、「勝てる候補」の条件はいくつかすぐに列挙できた。

そして、これらの条件を満たせる候補は、玉城デニー氏のほかに見当たらなかった。玉城氏を擁立できなければ、「オール沖縄」は安倍政権に負ける、とさえ思った。

だが、8月18日の地元紙2紙は、次のような内容の報道をした。県政与党側の「調整会議」は、呉屋守將金秀グループ会長、謝花喜一郎副知事、赤嶺昇県議会議員の3氏を軸に選考に入った、と。

わたしたち県民有志は危機感を募らせた。

若者グループからも人気を集めた呉屋氏は、絶対に固辞し続けると、わたしは独自の情報網で得ていた。「政治家にはなるな、経済人として生きよ」というのが先代創業者・呉屋秀信氏の遺言に近い家訓だからである。

残る候補は謝花副知事と赤嶺県議ということになるが、心を鬼にして分析すれば、この時点で、「負け戦確定」としか言いようのない状況だった。

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