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死してなお政権揺さぶる翁長雄志氏

阿部岳|2018年9月12日2:46PM

再びアイコンに

一方、知事選に勝つため、4年かけてあらゆる手段を講じてきた政府の目算も大幅に狂っている。求心力にかげりが出ていた翁長氏は、死去で再びアイコンとなった。9月30日の知事選が弔い合戦になることを最も警戒している。

ダメージコントロールの一環として、菅氏らが弔問に訪れた。自公両党が知事選に擁立する前宜野湾市長、佐喜真淳氏も「目標としてきた先輩」と繰り返す。弔う気持ちはみんな一緒で、焦点ではないと打ち消す狙いがある。

辺野古の現場で、8月中に埋め立て土砂を大量投入する計画も吹っ飛んだ。知事選前に工事はもう後戻りできないと見せつけ、諦めムードを広めるために準備されていた。今、県民を刺激すれば火に油を注ぐ、という判断が働いた。

一方、翁長氏を支えてきた勢力は、病状が悪化する中でも「翁長氏の後継者は翁長氏」などと詭弁を使って万が一の備えをしていなかった。寄り合い所帯はガラス細工のようにもろい。収拾がつかなくなることを恐れていた。

後継者選びは案の定、混迷しかけた。そこへ、翁長氏が期待する人物として衆院議員の玉城デニー氏の名前を挙げた音声データの存在が浮上。話はまとまったものの、亡くなってまで翁長氏頼みという実態を露呈した。

辺野古新基地建設をめぐる世論調査では、今も昔も県民の大多数が反対している。知事が工法の変更を承認しなければ、いずれ工事が行き詰まることも変わらない。玉城氏が基地建設は止められる、と県民を説得できるか。それとも、佐喜真氏が基地問題を棚上げして、政府との融和路線に期待を集められるのか。

超短期決戦。風向きはまだ読めない。

(あべ たかし・『沖縄タイムス』記者。2018年8月31日号)

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