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自衛隊は米国で常設訓練を
石破氏、日米地位協定改定訴える
横田一|2018年9月18日12:11PM
石破茂・元地方創生担当大臣が総裁選で安倍首相と対照的な選挙戦を展開している。8月10日の出馬会見を皮切りに毎週、各分野の政策発表の記者会見(フリーの記者も参加可能)を開いて、質疑応答の時間もたっぷり取って回答。安倍首相がようやく出馬表明をした翌27日には総括的な政策発表をしたかと思うと、31日にも重点政策の地方創生に関する会見を開いて、47都道府県ごとの5分程度の動画を作ったことを発表した。全国各地を行脚した経験を生かし、それぞれの地域の特産物や魅力などを語りながら地方創生の可能性を訴える内容だ。なお動画は、石破氏の総裁選向けの特設インターネットサイトで閲覧できるようになっている。
記者会見だけでなく、ぶら下がり取材にも丁寧に応じている。27日の記者会見の後、石破氏が必要性を繰り返し訴えていた日米地位協定の改定(先週号でも紹介)について、「(安倍首相が強調する)憲法9条改正よりも日米地位協定改定の方が緊急性は高いですよね」と聞くと、「当然です。アメリカで自衛隊の訓練をする場合、日本とアメリカで内容が違うことはありえない」と回答した。
そこで、「そうなると、自衛隊がアメリカで訓練する場合は、(沖縄と違って)住宅地や学校の上を飛べるはずがないということになります」と再質問をすると、石破氏は日米の違いを指摘した上で次のように明言した。
「飛べるはずがありません。なんで、日本では(沖縄のように住宅地や学校の上を米軍機が)飛んでいいのか?(米国との地位協定を改定して危険な飛行を禁止した)イタリアができることがなぜ日本でできないのか」
27日の会見で石破氏は、日米安保体制強化にもつながるとして、「アメリカ国内の自衛隊常設訓練場の創設を目指す」と発言していた。日本国内では十分な訓練ができない現状を受けての提案で、「そのためには日米地位協定の改定が必要で、日米はお互いに対等でなければならない」「在日米軍とのあいだには日本は家主、米軍はゲストという関係は十分構築可能なものだ」という持論をこの日も繰り返し述べていたのだ。
【「正直、公正」強調継続】
アメリカでの自衛隊訓練を通して日米地位協定の改定を実現しようとする石破氏と、運用改善で事足りるとする安倍首相の違いがより鮮明になる。昨年12月から今年1月にかけて沖縄でヘリ事故が頻発した際、故翁長雄志知事(当時)は何度も日米地位協定改定の必要性を訴えたが、対米従属の安倍首相は見向きもしなかった。どちらが、翁長前知事が訴え続けた沖縄の過重な基地不安をきちんと受け止めているのかは、一目瞭然だ。
イージス・アショアについてもこの日のぶら下がりで再確認すると、石破氏は安倍政権の説明不足をこう批判した。
「『海上自衛隊の負担を減らすため』ということをちゃんと説明しないと、『何のためのイージス・アショアです』という話になってしまう。FMS(対外有償軍事援助)でも一体、いくらになるのか分からない」
安倍首相との対決姿勢が薄れることもなかった。森友・加計問題を踏まえて打ち出した「正直、公正」のキャッチフレーズは取り下げないと明言、一部で報じられた封印説を否定したのだ。そして27日の政策発表でも「政治・行政の信頼回復100日プラン」を示した上で、具体的施策として内閣人事局の運営見直しを挙げた。官邸主導の政策推進プロセスの透明化についても強調、利害関係者と官邸の接触について「いつ、どこで、誰が、誰に会ったかという記録は明確でなければならない」「(面会記録の)保管は義務化」とのルール作りを公約にしたのだ。
森友・加計問題の説明責任を果たさない「不正直、不公正」の安倍首相と、「アベ友政治とは決別する」と宣言したに等しい石破氏との対決の構図が浮き彫りになる。討論会を極力減らそうとしている小心者で敵前逃亡傾向の安倍首相との本格論争が期待される。
(横田一・ジャーナリスト、2018年9月7日号)