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翁長樹子さんが語る夫、雄志前知事の思い

渡瀬夏彦|2018年9月26日7:12PM

8月8日に亡くなった前沖縄県知事の翁長雄志さんの妻、樹子さん(62歳)が『週刊金曜日』の取材に応え、辺野古への新基地建設反対など前知事の沖縄に対する思いを語った。

新基地建設反対の闘いは沖縄県知事選後も続く

おなが みきこ・那覇市生まれ。1982年に雄志氏と結婚。雄志氏は85年に那覇市議初当選。その後、沖縄県議、那覇市長を歴任する夫の政治活動を支えた。

翁長雄志知事が急逝してから、およそ1カ月後の9月6日の晩、妻の樹子さんが単独ロングインタビューに応じてくれた。

「翁長が常々言っていたのは、どんな相手でも、たとえ選挙で戦う相手であっても、人を傷つけては駄目だよ、ということです。他府県の人に対してもそうだし、ましてやウチナーンチュ(沖縄人)同士が傷つけ合うことがあってはならない、って。翁長と違ってわたしは直情径行型だから、つい言いすぎて相手を傷つけていないか、と心配になったりしています」

2年前から話題に

樹子さんは連日複数のメディアの単独インタビューを受けている。あるインタビューでは、辺野古新基地建設を強行しようとする安倍政権や公明党に率直な批判の言葉を向けた。樹子さんは、そのことを気にかけていた。しかし、その批判はごく当然の真っ当な言葉である。だから心配はいらないとわたしは申し上げた。

「最初は取材を断りたい気持ちでいたんですけど、今わたしにできることは、翁長の思いを多くの皆さんに知ってもらうことじゃないか、と思い直したんです」

記者会見ではなく、一人ひとりの取材者と丁寧に向き合う方法を選んだため、連日疲労困憊に陥る。わたしの取材の前日には10時間も取材を受けたという。強い使命感のなせる業だった。

わたしはあえて単刀直入に、故人による「後継知事候補指名」の真実について水を向けた。

「翁長は口癖のように言ってました。『僕は後継者指名はしないよ、僕のひと言で決まってしまうのはよくないからね。みんなの議論の中から後継者が出てきてほしい』と。でも玉城デニーさんの名前は、じつは夫婦の間では2年前ぐらいから、話題に出ていました。翁長に『デニーさんは、革新か保守か、どちらのイメージが強いかな』と訊ねられて、わたしは『どちらかと言えば保守でしょう』と答えた記憶もあります。そう聞いて翁長は少し安心したかもしれませんね。保守の人のほうが、幅広い支持を得られるはずだと常々考えていましたから。でも、デニーさんの名前を口にした会話が録音されているなんて知りませんでした」

最晩年の病床で玉城デニー氏の名前が翁長知事の口から出たという録音の主は第三者だったことが、おわかりいただけるだろう。

「2年前にわたしが翁長にはっきり伝えたデニーさんの印象は、演説は舌鋒鋭いよね、という点でした。デニーさんの言葉に、芯の強さを感じていました」

2年前から玉城デニー氏の名前が夫妻の会話に上っていたというのは驚きだが、樹子さんはごく当然のことのように「次のこともきちんと考えないといけませんからね。翁長の口癖は、『政治家は使い捨てでいいんだよ』でしたから」というのである。

沖縄の未来を築いていくのは、県の職員や県民一人ひとりだし、次の世代への橋渡しが自分の役割だ、という意味でもある。

「デニーさんは、あのとき考えていた以上に最高の人材なんですよね。米国人の父とウチナーンチュの母の間に生まれ、戦後沖縄の不条理の中で生き抜いてきた象徴的な存在。沢山の苦労をされているはずだけど、あの明るさがある。わたしたちが思っていた以上に、きっと奥深いものを持っている人だと今あらためて思います。もちろん保守・中道・革新・無党派の人まで幅広い支持を受けられる人であることも重要です。翁長が亡くなった今、デニーさんのような政治家がいてくれることに、運命のようなものを感じます」

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